コーヒー業界は日々進化しています。
スペシャルティコーヒーが世に浸透し始めてから約10数年。
今ではメディアやコンビニなどのおかげで、
「アラビカ種というコーヒーがある」
くらいには、世の中に広く浸透しているのではないでしょうか。
今回は、そんなアラビカ種のルーツでもあり、最注目品種と言える「ユーゲニオイデス種」についてお話します。
この記事を読み終えたら、コーヒーの楽しさを再確認できると共に「ユーゲニオイデスってどんな味がするのだろう?」とワクワクしてしまうこと間違いなしです。
- ユーゲニオイデス種とは?
- 有名になったきっかけ
- 気になる味わいは?
- 世界大会でのフレーバー表現
ユーゲニオイデス種の情報は、まだまだ世の中に出回っていません。
今回は、私の熱い想いと共にお届けしますので、どうぞ最後までお読みください!
「カネフォラ種」と「ユーゲニオイデス種」の子供が「アラビカ種」
数年前まで「アラビカ種」はアラビカ種であること以上の情報は無く、原種だと思われていました。
しかし近年の遺伝子解析研究により、なんと、アラビカ種は「自然交配種」であるということがわかりました!
交配品種は「カネフォラ種+ユーゲニオイデス種」です。
植物学的には、
カネフォラ種:父方祖先
ユーゲニオイデス種:母方祖先
になります。
アラビカ種に関してはメディアの影響や、世界流通量、品質の面からも知っている方が多いかもしれません。
ただ、カネフォラ種とユーゲニオイデス種については知らない人もいるかもしれないので、詳しく解説します。
カネフォラ種の特徴
発見された場所 | アフリカ南西部 コンゴ |
味わい | 酸味が弱く、苦味が強い。 焦げたような味わいがある。 |
栽培の特徴 | 低地、高温多湿(22〜28℃)で栽培できる。 病気に強い。 栽培コストが低い。 →栽培も手入れも楽で、丈夫に育つ |
成分 | カフェイン含有が多い(2.2〜2.8%) |
カネフォラ種は、味わいが特徴的です。
私もいくつかの産地のカネフォラ種を飲んだ事があるので、個人的な感想を書かせて頂くと、「烏龍茶、穀物、ローストナッツ、ごま油」みたいな印象を受けました。
どの産地のカネフォラ種でも共通するのは、フルーティな酸味や甘さがほとんど無く、香ばしい苦味や、やや焦げに近い苦味があったという点です。
「苦味」を感じやすいのは、含有する成分量と焙煎に影響しておりますが、カネフォラ種から感じる苦味は、カフェイン・クロロゲン酸が多く含まれているためです。
カネフォラ種 | アラビカ種 | |
カフェイン | 2.2-2.8% | 0.6-1.5% |
カフェインはコーヒーの苦味成分のうち「約10%」を形成していると言われており、アラビカ種と比べるとカネフォラ種のカフェイン量は2倍~4倍も含まれています。
カネフォラ種とアラビカ種の成分表をお見せしました。
一番右の列を比べていただくと、カネフォラ種のクロロゲン酸類の含有量は、アラビカ種の約1.3倍程度になります。
クロロゲン酸類は、加熱することにより以下2種類の苦み成分に変化します。
- クロロゲン酸ラクトン
- ビニルカテコールオリゴマー
この2種類の苦み成分は、カフェイン以上に強い苦みをもっており、コーヒーの主力苦み成分です。
そのため、クロロゲン酸類が多く含まれているカネフォラ種は強い苦みがあると思われます。
アラビカ種の特徴
発見された場所 | エチオピア、もしくは、南スーダン |
味わい | 高品質。 酸味があり、苦味が弱い。甘みがあるものも。 華やかで明るく、フルーツなどさまざまな味わい。 |
栽培の特徴 | 低地栽培だと品質が下がる。 高温多湿に弱い(18〜28℃が好ましい) 霜や病気に弱い。 →やや、栽培が難しく手間がかかる |
成分 | カフェイン含有が少ない(約0.6〜1.5%) |
ユーゲニオイデス種とカネフォラ種の子孫であり、現在世界で最も生産され流通している品種がアラビカ種です。
とても高品質で、その味わいから「スペシャルティコーヒーといえばアラビカ種」という認識が広まっています。
分かりやすく言うと、カネフォラ種の「真逆」の特徴を持っているということになります。
今回の目玉!ユーゲニオイデスの特徴
自生している場所 | ブルンジ、ルワンダ、コンゴ、ケニア、タンザニア、などアフリカのコーヒー生産地域。 雨の多い常緑樹林地帯、乾季がある落葉樹林地帯、サバンナなどにも自生している。 |
商業用に育てられている場所 | コロンビアのみ ・インマクラーダ農園 ・ラスヌベス農園 ・モンセラ農園 など |
味わい | 後述 |
栽培の特徴 | 1本の木から「たった150g」しか収穫出来ない。 樹高5mにまで成長するので、収穫が困難。 病害虫に弱くデリケート。 →非常に栽培が難しく、収穫量も少ない |
成分 | カフェイン含有が最も少ない(0.3〜0.8%) |
ユーゲニオイデス種は「ユーゲノイデス種」「エウゲノイデス種」などとも呼ばれます。
もう想像がつくかもしれませんがユーゲニオイデス種は、アラビカ種の祖先(母方)です。
祖先であった品種が時代を超えて、現在、単一の品種として商業用に育てられています。
まだまだ生産地がごく一部しかなく生産量が少ないため、超希少品種・最注目品種です!
ユーゲニオイデスが有名になったきっかけ
ユーゲニオイデスが有名になったきっかけは2つあります。
- コロンビアで初めて商業用として栽培成功
- WBCの1位~3位の全員がユーゲニオイデス種を使用
ユーゲニオイデスは、アラビカ種の祖先として限定エリアで自生しており、それまで多くは解明されてきませんでした。
しかし、コロンビアで初めて商業用としての栽培に成功したため、WBCでも使われるようになりました。
実はこのWBC、世界のコーヒートレンドを生み出すきっかけになることが多いです。
日本のコーヒーショップや日本のバリスタの大会(ジャパンバリスタチャンピオンシップ)もまた、このWBCに大きく影響を受けています。
例えば、
- グラインダー:EKグラインダー
- 品種:ゲイシャ種、シドラ種
- 精製方法:アナエロビックファーメンテーション、カーボニックマセレーション
など、常識になりつつあるものから最近のトレンドまで、すべてこのWBCから広まりました。
ユーゲニオイデス種は、生産量が少ないため、今後どれくらい流通するようになるかはわかりません。
しかし、今大会での結果からも、現在のゲイシャ種ブームから少し流れが変わりそうな予感がします!
気になるユーゲニオイデスの味わいは?
あるバリスタは、このように言いました。
今まで出会った中でも、一番驚きがあり、とても魅力的な味わいのコーヒーだ
うーん。
とても気になります…(私も飲んだことがないので!)
いろいろな文献を見ると、全員が口をそろえて「驚くような甘さを持つ」コーヒーとおっしゃっています。
その甘さは、甘味料の「ステビア」やお菓子の「飴」を思わせる強さで、酸味はほとんど無いそうです。
飴くらい強い甘みを持つコーヒーって面白いですよね!
大会で使用されたときのフレーバー表現を紹介
品種自体がとても「甘み」の強い味わいで、そこに、プロセスの個性が加わることによって更に驚くようなフレーバーを感じるようです。
2021年WBCで、ユーゲニオイデスを使用した選手は
「カカオニブ、ローズ、パパイヤ、パッションフルーツ、グレープフルーツ、グアバ」
など、南国系フルーツでフレーバーを表現されていました。
甘みの強さをイメージしやすいフルーツに例えている印象です。
まとめ
ユーゲニオイデス種の特徴を、アラビカ種やカネフォラ種と比較すると以下の通りになります。
- アラビカ種との共通点
-
- 甘さがある
- 生産が難しい
- カネフォラ種との共通点
-
- 酸味が少ない
- アラビカ種ともカネフォラ種とも異なる点
-
- 生産地域がコロンビアのみ(商業生産地域)
- カフェインが少ない
- 超希少品種
時代の流れとともに、研究が進み、今まで知り得なかった情報を知ることができたり、まったく新しい品種に出会うことができたりと、日々進化していくコーヒーの世界。
今日の地球温暖化により、コーヒーの生産は危ぶまれていますが、全世界の生産者、ロースター、バリスタ、そして消費者であるコーヒーラバーがいる限り、コーヒーの進化は尽きないのではないか、などと一人熱く想ってしまいます。
コーヒーって改めて面白いですよね。
いつの日か、このユーゲニオイデス種に出会うことができたら、ぜひ必ず飲んでユーゲニオイデス特有の「甘味料」や「飴」、「南国フルーツ」のような味わいを体感してください!
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