コーヒー業界は、話題の「コーヒー豆」「器具」「抽出方法」など、様々なジャンルが目まぐるしく進化しています。
今回の記事は、話題の「精製方法」についての解説記事です。
マニアックな内容になるので、覚悟してください!
現在、次世代のスタンダードになりつつある精製方法。
それは「アナエロビックプロセス」です。
既にあちこちのコーヒー屋さんで見かけるようになりましたが、以下のような疑問をもっている方もいるのではないでしょうか?
そもそも、アナエロビックとは何なのか?
なんでこんなにフルーティで、独特なフレーバーなのか?
一度飲んだ方はわかると思いますが、アナエロビック特有の個性的なフレーバーは一生忘れられないほど強烈です。
今回は、アナエロビックプロセスをわかりやすく解説し、このコーヒーの特別なフレーバーの元をたどります。
そして、似ているけど分かりにくい「インフューズドコーヒーとカルチャリングプロセス」との違いについても解説していきます!
- 精製の基礎知識
- アナエロビック精製とは?
- 味わいの傾向
- 世界中に広まった理由
- インフューズドコーヒー(カルチャリングプロセス)との違い
この記事を見るだけで、アナエロビック精製について詳しく知ることができるので、ぜひご覧ください。
コーヒーの精製(プロセス)とは?押さえておくべき基礎知識
コーヒーチェリー→種子→生豆
精製とは「収穫したコーヒーチェリー(コーヒーの実)から種子を取り出して、それを生豆(焙煎前のコーヒー豆)の状態にするまでの工程のこと」です。
別名で、プロセスとも呼ばれます。
コーヒーチェリーを生豆にするというと簡単そうですが、実は1ヶ月以上もかかる場合があり重労働です。
代表的な精製方法は4つあります。
- ナチュラル
- ウォッシュド
- パルプドナチュラル(ハニープロセス)
- スマトラ式
例えばナチュラルだと以下のような工程で精製します。
ウォッシュドの場合は以下の工程です。
基本的な精製方法の詳しい解説は「こちらの記事」で解説してるので、気になる方はご覧ください。
精製方法の選ばれ方ですが、元々は栽培される土地や気候に適したものという基準でした。
しかし、近年では土地や気候だけではなく、「コーヒーの品質をより良くし、他の農園との差別化を計る」という目的で選ばれるようになりました。
そんな味へのこだわりが加速している現代コーヒー界で、注目されている精製方法が今日紹介する「アナエロビックファーメンテーション」になります!
【次世代の精製方法】アナエロビック(嫌気性発酵)について徹底解説
ここからはアナエロビックについて以下の項目で解説していきます。
- アナエロビックの精製手順は?
- アナエロビックはどんな味わいになる?
- アナエロビックはなぜ広まった?
まずは、アナエロビックの精製手順についてです。
アナエロビックの精製手順は?
アナエロビックの正式名称は「アナエロビックファーメンテーション」です。
日本語訳すると「嫌気性発酵」。
漢字の通り「(空)気を嫌う発酵」という意味です。
空気に完全に触れさせない状態で「発酵」させるので、今までのコーヒーにはない独特なフレーバーが生じます。
- コーヒーチェリーのままタンクに入れて完全密閉する
- コーヒーチェリーがつぶれて果汁に満たされる
- 無酸素化で発生した微生物が活発に活動する
- 高濃度の二酸化炭素が発生
- 複雑なフレーバーが生じる
ちなみにアナエロビックとは、発酵の工程のことで、乾燥や脱穀の工程も別に必要になります。
そのためアナエロビックと併用して、通常の精製を行うのが一般的です。
精製方法 | 味わい |
---|---|
アナエロビックウォッシュド | クリーンで爽やかな酸味 |
アナエロビックハニープロセス | 甘みと酸味のバランス |
アナエロビックナチュラル | 独特かつ複雑なフレーバー |
発酵後に果肉を除去して乾燥させたら「ウォッシュド」や「ハニープロセス」、果肉のまま乾燥させたら「ナチュラル」となります。
あくまでアナエロビックは「発酵工程」で、通常の精製と複合して行なうと覚えておいてください!
アナエロビックはどんな味わいになる?
アナエロビックの味わいは主に3つの特徴があります。
- 強いフルーツフレーバー
- まろやかな質感
- 苦みや渋みが出にくい
コーヒーというよりは、フルーツジュースやお酒に近いような味わいになります。
具体的には以下のフレーバーで表現されることが多いです。
- シナモン
- イチゴジャム
- 熟したピーチ・パイナップル
- レーズン
- ワインやブランデー、ラム
上記の味わいが代表的ですが、嫌気性発行の種類によっては他の味わいになる場合もあります。
種類 | 発酵方法 |
---|---|
アナエロビック | 通常の嫌気性発酵。 密閉タンクで行われる。 |
カーボニックマセレーション | 密閉タンクに二酸化炭素を加える。 |
イーストファーメンテーション | イースト菌を添加する。 |
ラクティックファーメンテーション | 乳酸菌を添加する。 |
おもしろいのは「イーストファーメンテーション」と「ラクティックファーメンテーション」です。
イーストファーメンテーション:ライチ系
ラクティックファーメンテーション:ヨーグルト系
国内ではあまり流通していないので、見かけたらぜひ飲んでみてください!
未体験の方はコーヒーを飲んでいるのに「ヨーグルト」の味がして、、、イメージと味覚の違いに間違いなくびっくりすると思います!
コーヒーの楽しみ方が広がる「奇跡の一杯」になること間違いなしです。
Coffee fam.では、以下4種類のコーヒー豆を揃えております。
- 中国 雲南 天空農園 ダブルファーメンテーションナチュラル
- コロンビア ウイラ県 ダブルファーメンテーションウォッシュド
- ホンジュラス パライネマ アナエロビックウォッシュド
- ベトナム ラダー農園 ダブルイーストファーメンテーションウォッシュド
どれも個性あふれる味わいで、他の豆にはない味わいなので、ぜひお試しください。
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アナエロビックはなぜ広まった?
アナエロビックが広まった理由を話す前に、アナエロビックを開発した人のストーリーを少しだけお話します。
アナエロビックは、コスタリカのあるコーヒー国際企業に勤めていた方が「たった一人で」作り出した精製方法です。
それも、大きなプロジェクトとしてではなく、「自身の好奇心」による小さな研究として作り出した方法になります。
彼は「正しい」や「基本的」という概念にとらわれず、「なぜなのか?」「これをやったらどうなるだろうか?」と多角的に考えて研究を続け、
美味しいコーヒーは、品種や環境だけではなく人の手でも作る事ができる!
と言う答えに辿り着いたそうです。
なぜ広まったのか。
ひとりの熱い男による革命的な発明「アナエロビック」。
ここからはそんなアナエロビックが、なぜ広まったかについて触れていきます。
アナエロビックが広まった理由は、「やや品質の劣る部分を補ったり、個性をつけたりすることができるから」です。
コーヒーは農作物なので、毎年同じとは限りません。豊作でない年もあります。
また、ある一定基準の美味しさがあるのに個性が弱く評価を受けないコーヒーや、フレーバーの弱い品種のコーヒーもあります。
それらをカバーし、「更により良くすることができる」のがアナエロビックです。
インフューズドコーヒー(カルチャリングプロセス)との違いを解説
アナエロビックではないのに、フルーツなどのフレーバーが強いコーヒーもあります。
それは「インフューズドコーヒー」です。
まず「アナエロビック」と「インフューズドコーヒー」の違いを押さえましょう。
違いは「副材料」を「使っているかどうか」です。
また、インフューズドコーヒーも2種類に分けることができます。
- インフューズドコーヒー(インフュージョンコーヒー)
-
生豆を食材に漬け込んだもの。
ウイスキーやラム酒、ワイン、様々なフルーツの果汁に漬け込むことが多い。
- カルチャリングプロセス
-
生豆の前の状態での添加。
特徴は、通常の「ウォッシュドプロセスとほとんど同じ工程」であること。
ウォッシュドと違うのは、発酵の工程でウイスキーやラム酒、ワイン、様々なフルーツの果汁に漬け込むこと。
コーヒー界の未来を変えた革命的な精製方法を体感しよう!
今回の記事をまとめると以下の通りです。
- 精製とは「コーヒーチェリーを生豆にする工程」
- アナエロビックとは「副材料を使わず、無酸素状態で活性した微生物による発酵」
- フレーバーは「ベリー、スパイス、トロピカル、お酒、ヨーグルト」のような強い味わい
- 広まったのは「コーヒーの品質を上げ、個性をつけるため」
- インフューズドコーヒーは「フルーツなどを直接添加して作った」コーヒー
コーヒーを深く知っていくと、「これはアナエロビックなの?」「インフューズドコーヒーなの?」という疑問を持つ方も出てくるかもしれません。
現代では、精製方法の進化は目まぐるしく、毎年のように新しい方法が開発されます。
そのため、はっきりと書かれていない限り「曖昧である」というのが現状です。
曖昧であるという現状、、、インフューズドコーヒーなど味を付け足す行為、、、。
これらに対して、肯定的、批判的、いろいろな考え方があると思いますが、「感動する」「驚く」といった点で私は素晴らしいと思います。
コーヒーの楽しみ方を広げてくれ、コーヒーが苦手な人にも入り口を開いてくれるアナエロビックをぜひ体感していただきたいです!