突然ですが『コーヒーはワインと共通する点が多くあること』をご存知ですか?
例えば、コーヒー屋さんに行き、コーヒー豆などの味わいコメントを読むと「ピーチ」などのフルーツや、「明るい、爽やか」などという形容詞表現を一度は見かけたことがあると思います。
これらの表現は、実はワインの味覚表現方法を元に作られたものです。
また、それだけではありません!
最近では、ワインの醸造方法をコーヒーに応用したものもあります。
今回はその中でも「プロセス(精製)」にフォーカスした内容です。
コーヒーを始めたばかりの方でしたら、楽しみ方の幅を広げられますし、ワインの世界の面白さも一緒に知ることができます。
コーヒー上級者の方でしたら、アナエロビックプロセスとの違いを明確に理解できる内容になっているかと思います。
アナエロビックとの違いが気になる方も多いと思うので、先に載せておきます!
ご参考になれば幸いです!
二酸化炭素 | 発酵中の作業 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|---|
カーボニックマセレーション | タンクに直接入れる | 温度や湿度を数字で徹底管理 | 温度・湿度管理をすることで、「甘さ」「酸味」の度合いをコントロールできる | コントロールが難しくデリケート |
アナエロビックファーメンステーション | 入れずに、無酸素下で動く微生物によって二酸化炭素を発生させる | 特に無し | 手間が少なく安定的 | カーボニックマセレーションに比べて自在性は低い |
カーボニックマセレーション:大変だけど味わいの幅が出せる
アナエロビックファーメンテーション:比較的簡単に安定した味わいを出せる
\ブランデーやドラゴンフルーツなど/
【ワインが由来?!】カーボニックマセレーションとは?
ワインとコーヒーは共通点がある。と冒頭でお伝えしました。
このカーボニックマセレーションは、まさにワインの醸造方法を元に考えられた「特殊な醗酵プロセス」です。
簡単に言うと、空気(酸素)を完全に遮断し、「二酸化炭素」を使用して行う精製方法になります。
少し詳しく嫌気性発酵について説明すると、嫌気性発酵とは「無酸素の状態の中で初めて活性化する微生物を利用して行う醗酵のことで、す。
醗酵過程で発生する二酸化炭素と微生物が結びつくことで、コーヒーに驚くようなフレーバーをもたらしてくれます。
この空気を遮断して行う方法のことを、ワインでは嫌気性発酵といい、コーヒーでは主に2種類に分けられます。
- アナエロビックファーメンテーション
- カーボニックマセレーション
- アナエロビックファーメンテーション
-
アナエロビックファーメンテーションのアナエロビック(anaerobic)は、英語で記すと
an(否定形)+aerobic(好気性)
から来ています。
つまり「空気を好まない」醗酵プロセスという意味です。
- カーボニックマセレーション
-
カーボニックマセレーションを英語で記すと
carbonic(炭酸)+maceration(浸す)
からきています。
つまり「炭酸(二酸化炭素)に閉じ込める」発酵プロセスという意味です。
カーボニックマセレーションは、ワインだと「炭酸ガス浸漬法」と日本語訳するらしいです!
カーボニックマセレーションは「発酵」工程の方法の1つ
カーボニックマセレーションは、二酸化炭素を使用し豆を閉じ込めて発酵させる方法だと説明しました。
それでは、どのような流れで二酸化炭素が使われ、醗酵していくのでしょうか?
まず、アナエロビックファーメンテーションも、カーボニックマセレーションも、「発酵」工程の方法であり、これら単体でコーヒーチェリーをコーヒー豆にすることはできません。
そのため
- ウォッシュドプロセス
- ナチュラルプロセス
この2つのプロセス過程にある「醗酵」をカーボニックマセレーションに置き換えて行われます。
流れとしては、
- 収穫したコーヒーチェリーを各、精製処理の「醗酵直前」の段階まで行う
- その後、カーボニックマセレーションを行う
つまり、ウォッシュドプロセスの場合は・・・
ナチュラルプロセスの場合・・・
カーボニックマセレーションの具体的な手順
カーボニックマセレーションの手順を簡単にご説明します。
カーボニックマセレーションは、「コーヒーチェリー」もしくは、果肉除去をした「パーチメントコーヒー」を、タンクに入れて完全密封(無酸素)させた状態にし、途中から二酸化炭素を注入して醗酵を進めます。
二酸化炭素が入ることで、嫌気性の微生物がコーヒー生豆に付着しているミューシレージ(ネバネバとした粘質)を分解・変化する仕組みです。
その結果、以下3つの影響をもたらします。
- 質の良い酸味をもたらし、品質が安定する(眉間にしわが寄るようなイヤな酸味ではない)
- マイルドで穏やかな酸味
- 個性的なフレーバーになる
カーボニックマセレーションでしか出せない、飲みやすいのに個性のある不思議な味わいになります。
ワインの醸造「マセラシオン・カルボニック」が由来
カーボニックマセレーションの由来は、ワインの「マセラシオン・カルボニック」という醸造方法です。
ワインで有名な「ボジョレー・ヌーボー」はマセラシオン・カルボニックで作られています。
フランスを代表するワインですので、もしかしたら聞いたことがあるかもしれません。
マセラシオン・カルボニックとは、二酸化炭素が充満したタンクの中にブドウを潰さず入れ、完全無酸素の状態で発酵させる方法です。
嫌気性の微生物の働きにより、徐々に発行していき、最終的には自分の重みでつぶれ果汁の状態になります。
ワインの醗酵・熟成には、本来とても長い月日がかかるのですが、この醸造方法により短期間での発酵を可能にするのです。
このマセラシオン・カルボニックの特徴は下記のとおりです。
- キャンディーのように甘くフルーティな香りを作れる
- タンニンが生成されにくい(渋い成分)
- コーヒーと同じく心地よい酸味が生まれる(リンゴ酸)
- 他のワインよりも色素が濃く抽出される
- 嫌気性発酵のため、酸素による味の変化が少ない
以上のように、「品質の安定性」や「フレーバーの複雑さを出す」特徴があるため、コーヒーにも応用されるようになりました。
カーボニックマセレーションの気になる味わいは?
カーボニックマセレーションをおこなったコーヒーは、「柔らかい酸味と、驚くようなフルーツのフレーバーを感じられる」のが特徴です。
一例ですが、バナナ、ラズベリー、イチゴ、お菓子のガムのようなフレーバーを感じることもあるそうです!
この、「驚くようなフレーバー」は嫌気性醗酵処理の最大のポイントになります。
「カーボニックマセレーション」と「アナエロビックプロセス」の違い
「アナエロビックファーメンテーション」は「カーボニックマセレーション」と、仕組みがとてもよく似ています。
二酸化炭素 | 発酵中の作業 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|---|
カーボニックマセレーション | タンクに直接入れる | 温度や湿度を数字で徹底管理 | 温度・湿度管理をすることで、「甘さ」「酸味」の度合いをコントロールできる | コントロールが難しくデリケート |
アナエロビックファーメンステーション | 入れずに、無酸素下で動く微生物によって二酸化炭素を発生させる | 特に無し | 手間が少なく安定的 | カーボニックマセレーションに比べて自在性は低い |
上記のような違いがありますが、簡単にいうと、アナエロビックは二酸化炭素を途中から注入しません。
タンク内のチェリーが微生物と反応して醗酵が進み、果肉から自然に発生する二酸化炭素を利用します。
それ以外で注目すべき違いは、「発酵中の作業」です。
カーボニックマセレーションは「温度や湿度を徹底的に管理すること」が必要ですが、アナエロビックファーメンテーションは特に作業が必要ありません。
一見、カーボニックマセレーションは手間がかかってめんどくさそうに見えますが、その分、味わいの幅を出すことができます。
例えば、温度を「高温」に設定して醗酵させると、「甘さが増幅する」などの調整が可能です。
カーボニックマセレーション:大変だけど味わいの幅が出せる
アナエロビックファーメンテーション:比較的簡単に安定した味わいを出せる
上記のように覚えるといいと思います。
私の感覚ですが、アナエロビックファーメンテーションよりもカーボニックマセレーションの方が流通量が少ないです。
理由は、徹底した管理が必要なので、手間がかかるからではないかと思います。
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カーボニックマセレーションがメジャーになったきっかけ
特別なコーヒーは、「特別な場所」から発信され、浸透していくことが多いです。
この、カーボニックマセレーションもその「特別な場所」であるワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)がきっかけです。
オーストラリアの「Sasa Sestic」がWBCでこのプロセスのコーヒーを使い、優勝したことで素晴らしいコーヒーであると認知され、多くの農園、コーヒーショップに浸透していきました。
余談ですが、彼は、世界中の多くのコーヒー生産者と共にコーヒー生産も行っているバリスタです。
その中で、「醗酵」がコーヒーの品質のを左右する、ということに気が付いたそうです。
現在も、WBCなどで多くのカーボニックマセレーションコーヒーが使用されており、その驚くべき味わいからも、人気が高くなったと言えます。
まとめ
では、今回のお話をまとめます。
- カーボニックマセレーションとは、「二酸化炭素を後から注入する嫌気性醗酵プロセス」
- 名前と工程の由来はボジョレーヌーボーワインの醸造方法からきている
- 日本語訳としては「炭酸ガス浸漬法」
- アナエロビックとの違いは、「二酸化炭素」と「温度、湿度管理」の有無
- ワールドバリスタチャンピオンシップがきっかけで広まった
私は過去に、アナエロビックファーメンテーションのコーヒーや、カーボニックマセレーションのコーヒーを飲んだことがあり、やはり、そのフルーティさにとても感動しました!
ですが、残念なことに、両者を同時に飲み比べたことはありません。
同じ産地で、同じプロセスで、嫌気性醗酵の種類違いのコーヒーはどう違うのでしょうか?
想像してみると、ワクワクしませんか?
Coffee fam.では、まだカーボニックマセレーションのコーヒー豆はご用意できていません・・・
いつの日か、アナエロビックとカーボニックマセレーションを同時に提供して、みなさんに驚きを与えられたら幸せです!
\ブランデーやドラゴンフルーツなど/