コーヒーの三大原種のひとつである「ロブスタ種(カネフィラ種)」についてどのようなイメージをおもちでしょうか?

苦みや渋み、えぐみがすごい。
アラビカ種よりも価値が低く、できれば避けたい。
なんなら飲んだことがない。
一般的にロブスタ種は、独特なクセと苦みが強い味わいのコーヒーで、一般的には品質が低いといわれています。
飲用として多くの人々に飲まれているアラビや種に比べ、ロブスタ種は缶コーヒーやインスタントコーヒーなど加工用として使われることが多いようです。
今回はそんな「ロブスタ種」のイメージをくつがえす最高品質のコーヒー豆「ファインロブスタ」について解説します。



コーヒーについて詳しい方はもちろん、初心者の方にもファインロブスタが作られた経緯から魅力についてわかりやすく解説していますので、新たな発見になること間違いなしです!
ぜひ最後まで読んでロブスタ種の常識をくつがえした、最高品質のコーヒー豆「ファインロブスタ」の魅力を感じてください。
ファインロブスタとは?|ロブスタ版スペシャルティコーヒー
ファインロブスタとは、ロブスタ種の中でも高品質である事を示す鑑定書付きのコーヒー豆のことをいいます。
ベトナムの中南部のバオロクで生産され、ベトナムで初めて、国際的に認知されたCQI(Coffee Quality Institute)よりQ認証コーヒーとして認められました。
ファインロブスタは世界の流通量の2%と非常に希少価値の高く、ロブスタ種の常識をくつがえす品種として、近年世界中で注目を集めています。
ファインロブスタの歴史
世界から注目を集めている「ファインロブスタ」。
誰がどのように作ったのか気になるところかと思います。
ここからは「ファインロブスタ」がどのように作られ、世界の人に認知されていったのかを解説します。
世界市場におけるベトナムコーヒーの位置づけについて
ファインロブスタの魅力を知る上で、ベトナムコーヒーについて理解する必要があります。
ベトナムにとって、コーヒーはコメ、水産養殖品とならぶ主要な輸出農産物で、コーヒー豆の輸出量はブラジルに次いで、世界第二位です。
生産量の95%はロブスタ種で、生産量、輸出量は年々増加しています。
ロブスタ種は、収穫量が多く栽培しやすい品種です。
味はアラビカ種に比べると独特なクセと苦みが強く、そのまま飲まれる事は少なく、ベトナムでは苦みを抑えるためにコンデンスミルクを入れて飲まれています。
ベトナムで生産されているロブスタ種の9割以上は生豆のまま輸出され、輸出先で焙煎など加工を経て、缶コーヒーやインスタントコーヒーなどに使用されます。
加工用のため、あまり品質にこだわることはされず安価で取引されているのが実情です。
そのため、多くのコーヒー農家はコーヒー豆の収入だけでは生計を立てることができず、農園の仕事がないときは他の日雇いの仕事をしたり、農園を手放す農家の方も少なくない状況でした。



そんな状況を変えようと、現在Future Coffee Farm(未来農園)を運営している農園主 Toi氏がベトナムコーヒーの価値を上げるために立ち上がります!
高品質のロブスタ種を作ることが、ロブスタ農家の所得向上につながると信じ、Toi氏のよりスペシャルティコーヒーへの挑戦が始まります。
ファインロブスタの生みの親 未来農園 農園主 Toi氏について
Future Coffee Farm(未来農園)は、ホーチミンから車で約6時間走ったらラムドン省バオロクという町にあります。
2012年からコーヒー栽培を始め、翌年に高品質なロブスタ種の栽培を目指し、Future Coffee Farm(未来農園)を立ち上げました。
Future Coffee Farm(未来農園)という名前には農園主Toi氏(以下Toi氏)の「将来のベトナムコーヒーという夢を実現する」という想いが込められています。
しかし、Toi氏は最初からコーヒーについて詳しい訳ではありませんでした。
一から独学でコーヒーについて学び、日々試行錯誤を繰り返しながら、少しずつコーヒー豆の品質を向上させていったのです。



Toi氏は、納得がいく品質のコーヒー豆ができるまでに約2年の歳月をかけ、夢に向けたチャレンジをスタートします!
もちろん、その後も品質を上げるために労力を惜しまず、品質向上の挑戦を続けた結果、2019年ベトナム農家で初めて国際的に認知されたCQI(Coffee Quality Institute)で85点を取得しました。
それはToi氏がベトナムではじめてCQIに登録された農家になり、ロブスタ種のスペシャルティコーヒーであるファインロブスタが誕生した瞬間でした。
ファインロブスタ と8 Coffee 黒田氏との出会いについて
現在、ファインロブスタは日本をはじめ、アメリカ、ベルギー、カナダなどに輸出されています。
ファインロブスタが日本に輸出されるきっかけとなったのは、8Coffeeの黒田氏との出会いです。
黒田氏は、コーヒー鑑定士の先輩から「20年前にベトナムで飲んだコーヒーがとてもおいしかった」と聞いたことをきっかけにベトナムのコーヒーに興味をもちます。
そして2017年6月、高品質のロブスタを探すためにベトナムへ向かいます。
ベトナムに到着し、コーヒーの展示会にいきましたが、黒田氏が思っていたような展示会ではなく、最初はベトナムに来る意味がなかったなと感じていたようです。
その後、縁もあって現地のコーヒー会社(THE COFFEE HOUSE)のマネージャー(Tuyさん)を紹介してもらい、自身のコーヒーに対する想いや高品質のロブスタ種を探していることを話していたそうです。
するとTuy氏から「5年前からベトナムのロブスタの品質を上げるため、農家の所得向上のために、試験的におこなっているプロジェクトがある」ことを知らされます。
そして、そのプロジェクトで作られた数種類のロブスタ種のサンプルをもらえる事になり、日本に持ち帰ります。
日本に戻り、その時にもらったサンプルをカッピングしたところ、これまでのロブスタとは全く異なる、見た目からでも品質の良さがわかるベトナムのコーヒー豆と出会いました。
黒田氏はあとで知ることになりますが、それがFuture Coffee Farm(未来農園)Toi氏が作ったロブスタだったそうです。
その後、持ち帰ったサンプルのコーヒー豆の生産者に会うために、約1年後再度ベトナムに赴きます。
黒田氏は、サンプルのコーヒー豆をくれた現地のコーヒー会社を訪問しましたが、1年前のことでどのサンプルを渡したか分からず、目当てのコーヒー豆が見つからず途方に暮れていました。
そして日本に帰る飛行機の時間まで10時間を切ったころで、現地のコーヒー会社の頑張りもあり、もしかしたらFuture Coffee FarmのToi氏のコーヒー豆かもしれないということになり、急いで連絡を取ることになります。
Toi氏と連絡がとれ、急いで会う約束をします。
その時Toi氏はバオロクからホーチミンまで6時間かけて黒田氏に会いにきてくれたそうです。
それが黒田氏とToi氏が初めて会った瞬間でした。
帰国後、黒田氏はToi氏からもらったサンプルのコーヒー豆をカッピングして、1年前に味わったサンプルのコーヒー豆がToi氏によって作られた事を確信し、Toi氏がつくる高品質のロブスタを日本に輸入する事を決めます。
その後、黒田氏は何度かToi氏のコーヒー農場を訪れ、2019年ファインロブスタを初めて日本に輸入します。
Future Coffee Farm(未来農園)× 8 Coffeeの主な活動
Toi氏と黒田氏は、日本にファインロブスタを輸入することをきっかけに、さまざまな場面で協力して活動を行っています。
その中でもっとも大切にしている活動がベトナムのコーヒーの農家さんと日本のロースターをつなぐ活動です。
それは、ベトナムのコーヒーの輸出入を代行したり、現地の農家さんと直接取引するためのお手伝いなど多岐に渡ります。
そして毎年東京ビックサイトで開催されるアジア最大のスペシャルティコーヒーイベント(SCAJワールドスペシャルティコーヒーカンファレンス アンド エキシビション)に出店するなど、世界の人にファインロブスタを知ってもらう活動を行っています。
これからも、Toi氏と黒田氏はファインロブスタを通して、さまざまな場面で協力していくことでしょう。
ファインロブスタの精製方法と味わい
Future Coffee Farm(未来農園)で作られるコーヒー豆は、以下3つの精製方法でつくられています。
- Full Washed(フルウォッシュド)
- Winey-nature(ワイニーネイチャー)
- Winey-Honey(ワイニーハニー)
精製方法が異なると、味も変わります。
ここからは、それぞれの精製方法とその味わいについて解説します。
精製方法①:Full Washed(フルウォッシュド)
フルウォッシュドは、すっきりとした透明感のある味わいが特徴です。
工程は以下の流れで行われます。
- 収穫したコーヒーチェリーを選別(ピッキング)します
- チェーリーの果肉を除去(パルピング)します
- 果肉と種の間にあるヌルヌルした部分(ミューレージ)を圧力をかけて除去します
- 乾燥場(プール)で乾燥させます
種から果肉やミューレージをきれいに取り除いてから、乾燥させてつける製法です。
精製方法②:Winey natural(ワイニーナチュラル)
ワイニーナチュラルは、ベリー系の果実酒やワインのような甘い香り・味わいが特徴です。
工程は以下の流れで行われます。
- 収穫したコーヒーチェリーを選別(ピッキング)します
- ステンレスタンクの中に入れて、酸素にふれない状態でコーヒーチェリーを発酵させます
- 発酵させたコーヒーチェリーを乾燥させます
- ドライフルーツのようにコーヒーチェリーが乾燥したら中から種を取り出します
コーヒー豆の果皮や果肉を残したまま乾燥させる製法です。
精製方法③:Winey Honey(ワイニーハニー)
ワイニーハニーは、ワイニーナチュラルの甘みやフルーティさを感じながら、フルウォッシュドのすっきりした酸を感じられるのが特徴です。
工程は以下の流れで行われます。
- 収穫したコーヒーチェリーを選別します
- ステンレスタンクの中に入れて、酸素にふれない状態でコーヒーチェリーを発酵させます
- チェーリーの果肉を除去(パルピング)します
- 果肉と種の間にあるヌルヌルした部分(ミューレージ)を残したまま乾燥させます
果肉と種の間にあるミューレージを残した状態で乾燥させてつくる製法です。
ファインロブスタの購入方法
ファインロブスタは、ネットで購入が可能です。
色々な方が、それぞれの精製でつくられたファインロブスタを販売しています。
日本で初めてファインロブスタを輸入した8 Coffee の黒田さんもネットで販売されていますので、興味があれば参考にしてください。
常識をくつがえす「ファインロブスタ」を味わってみよう
この記事ではファインロブスタの魅力をはじめ、誕生から、日本そして世界の人から注目されるまでの経緯を紹介してきました。
2012年に、ベトナムのコーヒーを変えるために立ち上がったひとりの男の絶え間ない努力によって「ファインロブスタ」は誕生しました。
そして2019年にはベトナム農家で初めて、国際的に認知されたCQI(Coffee Quality Institute)で85点を獲得。
世界から注目されるロブスタ種になりました。
ファインロブスタは、Full Washed(フルウォッシュド)、Winey natural(ワイニーナチュラル)、Winey Honey(ワイニーハニー)の3つの精製方法でつくられています。
生産量が限られるため、3種類全て味わうことは難しいかもしれませんが、今はネットで購入もできます。
ぜひこの機会に、常識をくつがえした「ファインロブスタ」を味わってみてはいかがでしたでしょうか?