あなたはTDS、収率という言葉を聞いたことがありますか?
そもそも聞いたことがなかったり、知ってても難しそうだから敬遠してきたという方が多いのではないでしょうか。
TDSや収率とは、「抽出を数値で分析する」という発想から出てきた指標です。
コーヒーはやはり味わいを楽しむものですので、数値や分析とは縁がないようなイメージがありますよね。
しかし、毎回同じ味を再現したり、淹れるたびに上達したりするためには、数値を使って分析をしていく必要があります。
今回紹介する「TDS」と「収率」は、そんな数値を使った分析の中でも、プロが使うような上級編の分析です。
- そもそもTDS、収率とは?
- TDS、収率を計測するメリットとは?
- TDS、収率によって味わいがどのように変わるのか?
- TDS、収率を一瞬で測ることができる超便利な濃度計とは?
お店で淹れるような味わいにならず悩んでいる人は、今回紹介する「TDS」と「収率」を使って分析すれば、解決すること間違いなしです!
ぜひご覧ください。
【抽出の数値化】TDS・収率とは?
TDS・収率ともにコーヒーの抽出を評価するために使う数値です。
2つの数値について解説していきたいと思います!
TDSについて
TDS(Total Dissolved Solids)とは簡単にいうと”抽出したコーヒーの濃度”のことです。
日本語では純溶解固形分といいます。
TDSを算出するための公式は以下の通りです。(重さの単位は全てg)
コーヒー液中のコーヒー成分の重さ÷コーヒー液の重さ×100=コーヒー濃度(TDS)
TDSが高ければ濃いコーヒー、低ければ薄いコーヒーということになります。
収率について
収率とは、コーヒー粉に含まれる成分がどれだけ液体に抽出されているのかを示します。
英語でExtraction Yield(略してEY)とも言います。
収率を算出するための公式は以下の通りです。(重さの単位は全てg)
抽出された成分の重さ÷使用した豆の重さ×100=収率
抽出された成分の重さは、TDSを使って、
抽出したコーヒー液の重さ×TDS=抽出された成分の重さ
と表すことができます。
そのため、TDSさえ測定できれば、
抽出したコーヒー液の重さ×TDS÷使用した豆の重さ×100=収率
上記の式で計算することができます。
TDS・収率を計測するメリット3選
プロのバリスタがわざわざ「TDS」と「収率」を計測するのは、3つのメリットがあるからです。
- 抽出が適正かどうかを客観的に分析できる
- 味覚のブレに惑わされない
- 味を再現できる
メリット①:抽出が適正かどうか客観的に分析できる
抽出を数値で管理する最大のメリットは客観的に分析できることです。
味覚という人それぞれ異なるものではないので、共通言語として扱うことができます。
TDSと収率の適正数値は以下の通りです。
TDS:1.15%~1.35%
収率:18%~22%
TDSが1%強であるのを見ると、コーヒーの約99%が水からできていることになります。改めてコーヒーを淹れる時には水にもこだわらなければという気持ちになりますね。
このようにTDS、収率ともに一定の適正値がありますので、ここから大きく外れている場合は抽出が適正ではないかもしれないと考える目安にすることができます。
ただ、これらの数値はあくまで目安に過ぎません。
豆の産地や焙煎度など条件が変われば同じ数値でも与える印象が変わる可能性もあります。
過信はしすぎないようにしましょう!
メリット②:味覚のブレに惑わされない
コーヒーを数値で評価することによって味覚のブレに惑わされることは少なくなります。
人の味覚は体調によって感じ方が変わることが多いですよね。
私は重度の花粉症なのですが、花粉症の季節はコーヒーの味がいつもと違う感じがして何だか気持ち悪く感じます。
気をつけていても体調というのは常に変化していくもの。
もちろん自分の味覚を研ぎ澄ますという意識は大切なことだとは思いますが、もう一つの軸としてTDSや収率でコーヒーを評価することを取り入れてみるのもいいかもしれません!
メリット③:味を再現することができる
コーヒーを淹れる時に大事にしたいことの一つに”再現性”があります。
どんなにいいコーヒー豆を見つけても、抽出の仕方で思ってた味が出せなかったという経験がある方も多いのではないでしょうか?
再現性を得るために温度、豆の粒度、焙煎度、抽出時間などの条件を一定にするという方法はもちろんあると思います。
しかし、その日の気温や豆の鮮度など味が変わってしまう要因は数えればキリがないです。
レシピに目指すべきTDSや収率を記録しておくことで、その日によって抽出のレシピを微調整する目安にすることができます。
TDS・収率による味わいの変化
TDS・収率による味わいの変化を考えるときに、下記のSCAAのコーヒー抽出チャートがあるとイメージしていただきやすいかなと思います。
縦軸がTDS、横軸が収率の変化に対応しており、それぞれの値によってチャートが9分割されています。9分割のうち、どのゾーンに当てはまるかを計算することで客観的に味わいを解析することができるのです。
このコーヒー抽出チャートを参考にしながら、TDS・収率の変化がコーヒーの味わいにどのような変化をもたらすのかを解説していきたいと思います。
- TDSによる味わいの変化
-
TDSはSCAAのコーヒー抽出チャートでは縦軸に対応している数値です。
チャート上では数値が低ければ”WEAK”、数値が高ければ”STRONG”と記されています。
先ほども書いた通り、TDSはコーヒーの濃度というふうに捉えて欲しいです。
つまりTDSが高ければ濃い味に、低ければ薄い味になります。
濃い、薄いだけでは味をイメージしづらいかもしれないですが、
- 濃いコーヒー(STRONG)→濃厚な、コクがある、まったりした
- 薄いコーヒー(WEAK)→スッキリした、飲みやすい
というような表現をした方がイメージしていただきやすいかなと思います。
- 収率による味わいの変化
-
収率はSCAAのコーヒー抽出チャートでは横軸に対応している数値です。
収率が低ければ”UNDER-DEVELOPED”、高ければ”BITTER”と記されています。
収率とは、豆に含まれるコーヒーの成分をどれだけうまく抽出できているかを表す指標です。
実はコーヒーを抽出する際に味の成分が、
①酸味➜②甘み➜③苦味
の順番に出てくることをご存じでしょうか?
これが収率による味わいの変化に大きく影響してきます。
- 収率が低い(未抽出)→酸味
- 収率が適正値→酸味、甘み
- 収率が高い(過抽出)→酸味、甘み、苦味
という風に収率ごとに味わいが変化していくのです。
ここまでの内容をまとめると、コーヒー抽出チャートをみるときに
- 収率が低い(UNDER-DEVELOPED)→酸味が強い
- 収率が高い(BITTER)→苦味が強い
という風に和訳して理解すればイメージしていただきやすくなると思います!
Coffee Brewing Chart ※https://mountaincity.com/images/SCAA_brew_chart.jpg 参照
TDS・収率を計測したい方におすすめの濃度計
TDS・収率を測りたい時に使える濃度計というものがあります。
”COFFMETER”というメーカーの”DiFluid Coffee”という名前のものです。
本来TDSや収率が知りたい時には、冒頭でも説明したような式を使いながら計算によって求めます。
いちいち計算するのは、正直めんどくさいです。
かなり意志が強くないと、なかなか続けられないと思います。
そんな時に便利なのがこの濃度計です。
出来上がりのコーヒーをこの濃度計のセンサー部分に少量入れるだけで、わずか数秒でTDSを計算してくれます。
そしてこの濃度計専用のアプリを利用することで、Bluetoothを使ってスマホと連携させることができます。
測定後、出来上がったコーヒーのグラム数を入力すると、アプリ上でTDSと収率の関係を示すコーヒー抽出チャートを一瞬で作ってくれます。
SCAAのコーヒー抽出チャートと同様に9分割されており、ひと目でその時作ったコーヒーがどのような味わいになるのかを客観的に解析することができるのです。
SCAAのコーヒーチャートとの違いは” UNDER-DEVELOPED”の部分が”SOUR”と書かれていることくらいで、ほぼ同じものです。
使用の際には、
- 測定する際にはコーヒー液を室温と同じ温度にしてから測定すること
- コーヒー液は必ず攪拌してからセンサー部分に入れること
この2つを意識することがポイントです!
これらができていないことが原因で、出てくる数値にブレが出てしまう可能性があるので注意してください!
まとめ
今回はTDS、収率について解説してきました。
感覚で捉えがちなコーヒーの味わいという世界に、客観的な解析を取り入れることをあまり考えたことがなかったという方も多いのではないでしょうか?
今までになかった角度からコーヒーを理解するという意味でも、あなたがTDSや収率について考える機会になっていれば幸いです。
最後までご覧いただいきありがとうございました。