突然ですが、「ホームバリスタ」や「おうちバリスタ」という言葉を耳にしたことはありますか?
これらの言葉は、趣味として「家でコーヒーを淹れる人」「家でラテアートをする人」のことを指します。
最近のSNSを見ていると、趣味の域を超えて、公式のラテアート大会で優勝したりする方もいらっしゃるようなので、家で練習してから仕事にしていくのもいいなあと感じています。
そんなわけで、今回は「ラテアートをやってみたい!」「ホームバリスタになりたい!」という方のための入門として必要不可欠な「エスプレッソ」のお話しをしていきます。
- エスプレッソとは?
- 焙煎度別エスプレッソの味わいを紹介
- エスプレッソマシンの種類
- ラテアートに適したコーヒー豆の選び方
- 家でもトロトロのエスプレッソを淹れるための流れと基礎知識
「オススメのコーヒーマシン」や「抽出の流れ」についてなどまでも盛り込んでいますので、とても凝縮した内容になっています。
ぜひホームバリスタになるための第一歩として最後までお読みください!
エスプレッソとは?
イタリア発祥の飲み方、エスプレッソについて詳しく解説します。
エスプレッソとは、約9気圧の高い圧力により、短時間で抽出した濃厚なコーヒーのことです。
英語の「エクスプレス(express=急行)」が語源と言われており、「注文ごとに、特別にあなただけのために」や、「急行」という意味があります。
ショットグラスなどを使って淹れたるため、ひとくち〜ふたくち位の量感です!
単体で飲む方もいますが、どちらかというとカフェラテや、カプチーノなどのドリンクのベースとして使う方が多いと思います。
ちなみにですが、エスプレッソの抽出圧力、9気圧は一体どれくらいなのでしょうか?
- 1気圧は水圧で言うなら水深10メートル
- 1気圧を例えるなら、だいたい小指の爪(1センチ×1センチ)の上に1キロの重りが乗ったくらいの力
だそうです。
エスプレッソを抽出するフィルターの大きさは円形で直径約6センチ前後なので、その小さな中に水深9メートルの水圧がかかる、もしくは9㎏の重りが乗るということですね。
こうして、ものすごく大きな圧力がかかるため、高速で抽出されるのです。
【焙煎度別】エスプレッソの味わいを紹介
エスプレッソ発祥のイタリアは、カプチーノとカフェラテの発祥地でもあります。
そんなイタリア市民に親しまれている「エスプレッソ」と言えば「深煎り」の濃いコーヒーです!
この深煎り文化が広く伝わり、セカンドウェーブを経て「エスプレッソ=深煎り」というのがセオリーとなっていました。
しかし、サードウェーブが世界中に広がったことで「浅煎りのコーヒー」が浸透し、「エスプレッソ=深煎りだけではない」という認識が広がりました。
ここでは、焙煎度合いの違いによる、エスプレッソやカフェラテのテイストをご説明していきます。
【深煎り】エスプレッソ・カフェラテの味わい
エスプレッソ
深煎りのエスプレッソは、どっしりとした苦味、トロっとした質感、ほろ苦い甘さ(多くはこの甘さを「カラメルのような甘さ」などと表現したりします)、酸味の無い濃厚な味わいが特徴です。
いわゆるパンチのあるコーヒーになります。
本場イタリアでは、深煎りエスプレッソにお砂糖をたっぷり入れて「食後のデザート」感覚で楽しむのが定番です。
まるでカラメルプリンのような味わいでめちゃくちゃおいしい!!!
カフェラテ
ミルクの甘さに負けないため、コーヒーの主張がしっかりと感じられるバランスのとれた味わいです。
苦味がミルクの甘さを引き立て、ほろ苦くも甘く香ばしいカフェラテを楽しめます。
【中煎り】エスプレッソ・カフェラテの味わい
エスプレッソ
苦味・酸味・甘さ・フルーティさ・ボディが感じられる、バランスのとれた味わいになります。
深煎りに比べると、全体的に軽く飲みやすいです。
柔らかい苦みとフルーティさを両方楽しむことができるため、深煎りと浅煎りの良い所をとったエスプレッソと言えるかもしれません。
また、その飲みやすさから、砂糖を入れずに飲むスタイルが多いです。
カフェラテ
程よいコーヒー感と甘さがあり、後味にフルーティな酸味をほんのり感じるカフェラテです。
飲みやすいので、苦みが苦手な方や浅煎りのカフェラテを飲んだことが無い方・苦手な方におすすめです。
【浅煎り】エスプレッソ・カフェラテの味わい
エスプレッソ
酸味が非常に強く、フルーティです。
苦味はほとんど感じず、深煎りと比べるとボディは非常に軽くサラサラとしています。
酸味が際立つ分、フレーバーが鮮明なので産地や精製による特徴がハッキリと感じられます。
砂糖を入れずに飲むスタイルがほとんどです。
カフェラテ
まるでロイヤルミルクティーや、アーモンドミルクのような味わいを楽しめるのが浅煎りのカフェラテの特徴です。
苦みが無いのでコーヒー感は薄れますがミルクの甘さを引き立てます。
定番の家庭用エスプレッソマシン6選
今回は、定番の家庭用エスプレッソマシンを6種類をご紹介します。
性能は金額に応じますが、何を求めるかで選ぶ選択肢が変わると思うので、使用したい頻度や、価格帯も合わせてご参考ください。
- デロンギ スティローザ
- デバイススタイル TH-W030
- ボンマック BME-100 DARMAP
- ソリス グラングストー
- ソリス パーフェクタクラス
- シモネリ オスカー
結論から言うと、以下の目的で買い分けるといいと思います。
価格と性能のバランスを目指すなら→デロンギ スティローザ
本格的なおうちバリスタを目指すなら→ソリス パーフェクタクラス
業務用に近い使い心地と、さらなる本格的な高性能さを求めるなら→シモネリ オスカー
上記が良いと思います!
WPM Milk Steamer ミルクスチーマーMS-130T3
エスプレッソマシンではありませんが、スチーム専用マシンもおまけで紹介します!
エスプレッソの抽出はできませんが、ほぼ業務用と言っても過言ではないスチームができる高クオリティのマシンです。
ラテアートに適した焙煎度|「深煎り」がラテアートに適している理由
ラテアートに適した焙煎度は「深煎りのコーヒー豆」がおすすめです。
- アートが書きやすい
- 茶色と白のコントラストがはっきしている
細かく解説していきます。
理由①:アートが書きやすい
例え話から始めると、水彩絵の具を想像してください。
複数の色を重ね塗りする時、水分の多い絵の具同士だと滲んで混ざり合ってしまったり、ぼやけてしまいます。
しかし、水分の少なく固い絵の具だと、それぞれが混じってしまうことなく、しっかりと絵が書けますよね。
同様のイメージで、深煎りのエスプレッソはトロッとした粘性があるので、しっかりとエスプレッソの上にミルクの泡が乗り、滲むことはありません。
そのため絵の具のように、混ざってしまうことなく、ラテアートが書きやすいのです。
理由②:茶色と白のコントラストがはっきしている
深煎りエスプレッソは味だけではなく、液体の色も濃いです。
そのため、ミルクの白色とエスプレッソの茶色のコントラストがクッキリとします。
特に複雑なラテアートになればなるほど、細かい線が沢山入るので、茶色と白色がはっきりとしていることで、より鮮明で綺麗なデザインを描くことができます。
写真や洋服、絵画などどんな物でも、明度が高く、色の違いがわかりやすいものほどハッキリと全体像が良く見えるのと同じイメージです。
つまり、美しいラテアートには色のコントラストも重要なのです。
中煎りや浅煎りはラテアートに向かないのか?
中煎りや、浅煎りはラテアートに向かないのか?
と思われるかもしれませんが、そういうわけではありません。
一般的なラテアート(ハートやチューリップ、リーフなど)でしたら描くことはできます!
浅煎りファンの方、ご安心ください。
ただ、デメリットとして以下の点が挙げられます。
- 粘性が弱いので少し描きにくい
- 複雑なラテアートにはやや不向き
- コントラストがやや弱い
焙煎が浅いほどエスプレッソの粘性がサラサラと弱くなるため、ミルクとのコントラストが出にくく、注いだミルクがその場に保持できずにエスプレッソと同化してしまいやすくなるからです。
ちなみに、エスプレッソは深煎りに限らず「デザインを描きにくい豆」もありますのでご注意下さい!
筆者はバリスタとして実際にラテアートもしているため、あくまで経験則ですが、ご参考頂ければ幸いです。
- ナチュラルプロセスのコーヒー豆
- カフェインレスのコーヒー豆
- 焙煎したてのガスの多い豆
- 抽出しすぎて水分の多いエスプレッソ
まだその原因は解明されていませんが、共通していえるのは「クレマ」や「ガス」がミルクの流れを邪魔してしまい、ミルクが広がらず、とにかく描きにくいです。
家でもトロトロのエスプレッソを淹れるための方法と基礎知識
美味しいエスプレッソを淹れるために必要不可欠なのは「小数点単位できちんと計量すること」です。
そのための前準備として前述でご紹介した家庭用エスプレッソマシンの他に、エスプレッソ挽きができる電動コーヒーミルが必須になります。
ここからは「道具→エスプレッソの手順→ミルクスチームの手順」の流れでご説明していきます!
エスプレッソに必要な道具
エスプレッソに必要な道具は下記のとおりです。
- エスプレッソマシン
- コーヒーミル
- 深煎りコーヒー豆
- タンパー
- ノックボックス
- 浄水→水道水はカルキが溜まり故障の原因になります
- デジタルスケール
- スチームピッチャー
- 牛乳
- コーヒー用ダスター
- ミルクスチーム用ダスター
とろとろのエスプレッソを淹れるための手順
家でもとろとろのエスプレッソを淹れるための手順を紹介します。
- コーヒー豆を計量する
- エスプレッソ挽きにする
- 粉をセット&タンピングする
- フラッシュ&抽出
とにかく小数点単位で記録をし、再現性を高めることが重要です!
杯数 | 豆の量 |
---|---|
1杯分(シングル) | 7g~10g |
1杯分(ダブル) | 16g~20g |
2杯分 | 16g~20g |
あるワールドバリスタチャンピオンの方は、
「約±0.1〜0.2g前後ならそこまで大きく味わいに影響しない」
と著書で記しています。
ですが、例えば、0.5gや0.9gだと大きな誤差になります。
エスプレッソは、1gで味が変わる飲み物なので、小数点以下までしっかりと計ることを意識しましょう。
1番ベストなのは、エスプレッソ用グラインダーで挽くのが確実ですが(その場合の粉を挽く作業を「ドーシング」といいます)
高価なので、揃えるのは大変ですよね。
もしも無い場合は、「エスプレッソ用の極細挽き」に対応した家庭用ミルで大丈夫です。
粉をセットする際は、フィルター内をきれいに拭いてください。
前回の粉が残っていると、その豆からも抽出されてしまうので美味しく淹れられません。
きれいに拭いてから粉をセットしましょう。
その後は、タンピングをします。
タンパーという専用道具を使い、垂直で均一な手の圧力をかけて粉表面を平らにします。
タンピングをした時に斜めに傾いてしまうと、不均一で適正でない抽出になってしまいます。
ポルタフィルターをセットする前にフラッシュをします。
- 粉を落とし汚れをなくす役割
- 抽出グループ部分の温度を高く(適温に)する役割
↓
フラッシュ後は、ポルタフィルターを即時にはめて抽出します。
ポルタフィルターもグループも基本的には高温になっているはずです。
コーヒーは高温で変化しやすいため、タンピング後は時間を置かず、すぐグループにセットし、抽出を行います。
↓
抽出された液体の重さを測ります。
必要量まで達する少し手前で抽出ボタンをストップすると、丁度よい量になります。
【 杯数 / 出来上がり量 】
1杯分(シングル) 7g~10g 25~30cc
1杯分(ダブル) 16g~20g 50~60cc
2杯部分 16g~20g 1杯分 25~30cc
ツヤツヤミルクにするためのミルクスチームの手順
続いては、ミルクスチームの手順を紹介します。
- 冷たい牛乳を用意する
- 空ぶかしをする
- スチームをする
- 最後に空ぶかしをする
常温に少し置いて完全に冷えていない牛乳だと、温度上昇が速くなり温め終わるまでの時間が短くなってしまいます。
そうすると、キメ細かい綺麗なフォームドミルク(泡入りのミルク)を作るのが難しくなるので、使う直前まで冷やした牛乳を使いましょう。
空ぶかしとは、スチーム前にスチームノズルから水蒸気を空出しすることです。
ノズル内に、前回のスチーム時の水蒸気が溜まって結露しているためそれを排出する役割があります。
もしも空ぶかしをせずにスチームしてしまうと、大量の水がミルクの中に入ってしまい、水っぽいミルクになってしまいます。
また、万一前回使用時のミルクがノズルの中に入っていた場合の排出の役割もあるので、空ぶかしは重要です。
この部分はかなり練習が必要な部分になるので、詳細は別記事に書きます。
ざっくりとした流れだけ書くと、以下の流れです。
- チリチリと音を立て泡を取り入れる
- 撹拌し綺麗な泡にする
- 温度上昇を待って終了
詳しくは「ラテアートの大きな壁!ミルクスチームの方法と成功のコツを紹介」をご覧ください。
最後は必ず空ぶかしをします。
高温の状態でミルクを放置すると、ミルクが固まってしまい取れにくくなります。
それを何度も繰り返すと、詰まりや不快なにおいの原因になり、マシンの故障につながるので注意が必要です。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
それでは今回の記事をまとめていきたいと思います。
- エスプレッソとは「高圧・高温短時間抽出」で淹れた少量の濃いコーヒー
- 深煎りエスプレッソは「苦味とほろ苦い甘さ」
- 中煎りエスプレッソは「苦味と酸味と甘さのバランス」
- 浅煎りエスプレッソは「強い酸味とフルーティさ、個性的な味わい」
- エスプレッソマシンには沢山の種類があるが、特に使いやすくおススメなのは「デロンギ スティローダ」や「シモネリオスカー」
- ラテアートに特に適したコーヒーは「深煎りのコーヒー豆」
- 浅煎りでもラテアートを書くことは十分可能
となります。
時代や、コーヒー文化の移り変わりと共に、深煎りだけでなく浅煎りのエスプレッソで淹れたカフェラテも楽しめるようになってきた今、豆の味わいを選ぶことも楽しみの1つになるのではないでしょうか?
「今日のカフェラテはどんな味かな?」と考えながら淹れたり、お店で注文するってワクワクしますよね。
次回は「ミルクスチームのコツとラテアート」についてとなりますが、それを読む前に大事なことがひとつあります!
それは「ラテアートはデザインを上手く書くことを目的としない」ことです。
なぜなら、カフェラテはコーヒーありきの飲み物だからです。
それをおざなりにしたり、ラテアートがしやすいような無理な抽出をしてラテアートの練習をしても、その一杯に美味しさはあるでしょうか?
大事なのは「エスプレッソの味わい」です。それを忘れないでくださいね。
では次回をお楽しみに!