皆さんは「甘いコーヒー」と言われたら、何を思い浮かべますか?
「甘いカフェラテ」でしょうか?
それとも「砂糖をたっぷり入れたコーヒー」でしょうか?
もちろんそれらも正解ですが、実はコーヒー豆の中には砂糖を添加しなくても甘いという、元から甘みを持った種類があります。
よく、バリスタの方などが「〜のような甘さのあるコーヒー」「甘さが強いコーヒー」などの言葉を使います。
これは、砂糖による甘さではなく、コーヒー豆が元から持っている甘さを指しているのです。
では、本題です!
砂糖を入れてないのに、「甘い」のは一体なぜなのでしょうか?
今回の記事では、コーヒーの甘みの正体についてお話ししていきます。
- コーヒーにおける甘さの定義
- 甘さはどこからくるのか
最近のサードウェーブの影響により、コーヒーは苦いだけの飲み物ではなくなっています。
「苦み・甘み・酸味」
今回は「甘み」について深堀りしていきます!
コーヒーにおける甘さの定義
「日本スペシャルティコーヒー協会」ではコーヒーの味覚評価の尺度が決まっており、「甘さ」についても言葉で定義づけされています。
今回はわかりやすいように箇条書きにまとめてみました。
その他のコーヒーにおける味覚の定義もありますが、今回は省かせていただきます。
甘さの定義は以下の通りです。
- 収穫された時点で、熟度の高いもの。また熟度の均一さに影響する。
- 焙煎されたコーヒーに含まれる糖分の量に影響するが、絶対的ではない。
- ある1つの成分だけが甘さに由来しているのではない。
- 甘さを構築する「他の成分や要素」に影響する。
うーん。
いまいちわからない。
わかりやすくまとめると、
甘さとは、収穫時の熟度が高く均一であるほど、焙煎した後に「甘さ」を感じる要素や成分が多く含まれている。
そのため、焙煎の工程だけが甘さを引き出しているわけではない。
熟度をどれだけ高められたのか!
その熟度を引き出す焙煎ができたのか!
以上、ふたつの要素が重要になってきます。
甘いコーヒーができる環境は2つの条件を満たしている
コーヒーチェリーは完熟になるまで、ゆっくりと長い時間を経て成長していきます。
その過程で、甘みに関係する成分がどんどん形成され、甘みの強いコーヒーになっていくのです。
ポイントは「ゆっくり長い時間を経て」ということ!
ゆっくり完熟させるためには「過酷な環境」、、、
つまり、「高い標高」で「気温の寒暖差が激しい」地であることが必要です。
あえてコーヒーにとって厳しい環境で育てることにより、完熟までの時間がのび、甘み成分がどんどん蓄えられていきます。
コーヒーの甘みを作る成分とは?
完熟のコーヒーチェリーには沢山の成分が詰まっています。
「ショ糖」「多糖類」「脂質」「たんぱく質」など、甘さや香り、酸味、苦みなどに関係する成分です。
このうち甘みに関係するのは、「ショ糖」「多糖類」ではないかと言われています。
甘み成分①:ショ糖
「ショ糖」とは、砂糖の主成分で、焙煎前のコーヒー生豆に10%弱含まれています。
砂糖の主成分からわかる通り、かなり甘みの強い成分です。
しかし、焙煎後になると、0~3%ほどしか含まれなくなるため、甘さの要因とは考えにくいかもしれません。
甘み成分②:多糖類
「多糖類」とは、10個以上の単糖の結合体で、代表的なものにでん粉があります。
ショ糖と比べて、甘みはそれほど強くないのが特徴です。
甘みは強くありませんが、生豆の約50%、焙煎豆の約30%を構成しているため、甘さに影響しているのではないかと思われます。
焙煎によるコーヒーの甘みの生成
コーヒー焙煎にかかせない用語「メイラード反応」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
メイラード反応とは、加熱により「タンパク質(アミノ酸)」と「ショ糖」が化学反応を起こしてメラノイジンという物質を作ることをいいます。
メラノイジンは、メイラード反応によってできた褐色物質でつまり焦げて茶色になった色の成分です。
メイラード反応は、時間が長いほど甘さや香りがでて、短いと酸味が強く軽い味わいになるといわれています。
様々な要素が合わさって「甘さ」が形成されるので、要因を一概には言えません。
ただ、私の経験上は、焙煎時間が長くなればなるほど甘みが増していくのは確かです。
そして、2ハゼ付近(215℃付近)から苦みが前面に出ていき、甘みが隠れていきます。
甘みが強いコーヒー豆の特徴
甘みが強いコーヒー豆の特徴を紹介します。
- 産地
- 精製方法
- 焙煎度
上記要素ごとに紹介します。
特徴①:産地
甘さを特に感じやすいコーヒー産地は、大きく分けて2つの大陸です。
- 中南米
- アフリカ大陸
まずは「中南米」についてです。
中南米
中南米のコーヒー豆は、3つの味わいの特徴があります。
- メキシコ
- エルサルバドル
- ホンジュラス
- ペルー
「ナッツのフレーバー」「柑橘系の酸味」が特徴です。
全体的にスッキリとしていて、甘さ・酸味・苦みのバランスが取れた味わいが多いように感じます!
- グアテマラ
- コロンビア
「はっきりとした酸味」や「豊かなコク」があります。
全体的に甘さが強く、フレーバーが豊かに感じられるバランスの良いコーヒーが多いです!
- ブラジル
フルーティさは弱いですが、「ナッツ」や「チョコレート」のようなバランスのいい甘みを感じられます!
アフリカ
次に「アフリカ大陸」についてです。
アフリカ大陸のコーヒー豆は、フルーティな甘さが特徴です。
「ベリー、カシス、柑橘、ストーンフルーツ(桃など)」等、さまざまなフルーツにたとえられます。
特徴②:精製方法
精製とは、収穫したコーヒーチェリーの実を取り除き、焙煎前の生豆の状態にする工程です。
「プロセス」とも呼ばれます。
この精製の方法によって、産地の味わいだけではない、甘さやフレーバーを引き出すことが可能です。
より強い甘さを感じるものから順に、、、
- ナチュラル
- ハニープロセス(パルプドナチュラル)
- ウォッシュド
ここからは、簡単に精製方法の説明と、精製方法により引き出される味わいの特徴を説明していきます。
ナチュラル
収穫したコーヒーチェリーを、果肉(ミューシレージも含む)が付いたまま天日乾燥させます。
どのプロセスよりも、一番コーヒー生豆に果肉が付着している時間が長いのが特徴です。
甘さと質感が最も強く形成されるため、抽出したコーヒーも同様に甘く感じられます。
「ベリー系」「赤ワイン」などの風味表現が多いです。
ハニープロセス(パルプドナチュラル)
果肉除去を行ったあとに、生豆になる前の皮に付着したミューシレージを取り除かずに、乾燥を行います。
ウォッシュドプロセスよりも甘さと質感が強く、ナチュラルプロセスよりも酸味がしっかりと形成されているのが特徴です。
「ハチミツのような」「ロゼワイン」「シトラス」などの風味表現が大多く使われます。
ウォッシュド
果肉除去を行ったあとに、醗酵層でミューシレージを分解し乾燥させます。
その名の通り、水で洗うので、すっきりとした爽やかな酸味が特徴で、ほのかな甘味があります。
「シトラス系」「白ワイン」などの風味表現が多く使われます。
このように精製によって甘みの強さが大きく変わり、また質感や甘さのボリューム、フレーバーも変わるということです。
より詳しい精製方法の解説はこちらの記事で行っています。
また最近は、各国の農園さんの研究と技術の向上により、精製工程だけでなく発酵工程も甘さに影響するとわかりました。
特に注目されている発酵プロセスは、「嫌気性発酵プロセス」と呼ばれるものです。
ワインと似たような発酵工程により、独特な甘さをもたらします。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
特徴③:焙煎度
酸味 | 甘み | 苦み | |
---|---|---|---|
深煎り | × | ○ | ◎ |
中煎り | ○ | ◎ | ○ |
浅煎り | ◎ | ○ | × |
コーヒーの焙煎により、甘さを強めることができます。
焙煎の一番わかりやすい指標は「焙煎度」です。
焙煎度合いによって「甘さ」の感じ方の違いを紹介します。
深煎り
2ハゼまでしっかり焙煎すると、深煎りになります。
バニリン(アイスクリームのような甘い香り)やこうばしい香りが特徴的です。
味わいは、「カラメルのようなほろ苦い甘さ」「ビターチョコレートのようなほろ苦い甘さ」が感じられます。
中煎り
1ハゼが終わり、2ハゼ前で焙煎を止めると中煎りになります。
フラノン類(砂糖などの糖類を焦がした時に感じるほろ苦い甘い香り)が特徴的です。
味わいは、「キャラメル」「シュガー系の甘さ」「フルーツの甘さ」が感じられます。
浅煎り
1ハゼ終了後、1分ほどで焙煎を止めると、浅煎りになります。
香り自体は、中煎りと同じフラノン類です。
しかし、味わいは、酸味がしっかり残っており、強いフルーツのような酸味と甘さが感じられます。
コーヒーの甘みが増す抽出方法を紹介
ここでは、日本で一番人気の「ペーパードリップ」の淹れ方を紹介します。
甘さを引き出す要素はこちらです。
上記コツは、成分の抽出効率を上げるためのものです。
そのため、質の悪いコーヒー豆を使うと、ただただまずい成分をたくさん抽出しただけになります。
大前提として押さえておくべきことは、
- スペシャルティグレードである
- 上手く焙煎がされている
- 鮮度がいいこと(保存方法を守って1か月以内の豆)
上記の前提を押さえたうえで、今回紹介したコツを試してみてください。
まとめ
では、今回のお話をまとめますと
- 甘さには協会が定める定義がある
- 高い標高でしっかり熟成されたコーヒーチェリーには甘み成分が多く含まれる
- コーヒーチェリーには糖類が含まれているので、甘さに影響がある可能性が高い(ショ糖、多糖類)
- 焙煎により甘さが引き出される(バニリン、フラノン)
- 甘さを感じるコーヒー産地は、中南米、アフリカ産が多い
- 挽目や、湯温、水の種類目、注ぎ方で甘さを引き出すことができる
となります。
酸っぱすぎず、苦すぎない。
だれもがおいしいといえるコーヒーを淹れたい場合は、甘さに注目するといいと思います。