みなさんはパルプドナチュラルやハニープロセスといった言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これらの言葉は、コーヒーの精製方法について調べているとよく耳にすると思います。
「パルプドってドラクエの呪文であったような。なんか強そう」
「ハニープロセスっていうことはハチミツ塗ってるのかな?なんか甘そう」
この記事を見ている方の中には、上記のような疑問を抱いている方がいるのではないでしょうか?
そんな謎多きパルプドナチュラルとハニープロセスですが、どちらも「半水洗式」と呼ばれる精製方法です。
非常によく似た精製方法で、近所の喫茶店のマスターは以下のようにおっしゃっていました。
「パルプドナチュラルとハニープロセス?それ一緒だよ」
しかし、わたし的には「そんな訳はない!」と、モヤモヤが残っており、
名前を分けるってことは何か違いがありそうなんだよな。
このさい徹底的に調べてやる!!
ということで、今回の記事では「パルプドナチュラルとハニープロセスの違い」について徹底的に調べ、解説したいと思います。
コーヒーの精製とは?
大前提として、パルプドナチュラルとハニープロセスは両方ともコーヒーの精製方法の名前です。
「精製」とは何か?まずはそこから説明していきます。
この取り出した種子を焙煎することで、私たちがよく知るコーヒー豆になります。
精製の工程は、方法によって異なりますが、主に3工程です。
コーヒーの果実を乾燥させます。
期間はだいたい「数日から数週間」です。
乾燥中は乾燥ムラが出ないよう定期的に撹拌したり、強烈な陽射しから守るためにかぶせ物をしたりします。
乾燥した果実と種子を覆うパーチメント(固い殻)を脱穀します。
各産地の基準に沿って選別されます。
コーヒーの代表的な精製方法を2つ紹介
コーヒーには代表的な精製方法が2つあります。
- ナチュラル(非水洗式)
- ウォッシュド(水洗式)
それぞれ簡単に説明します。
ナチュラル(非水洗式)
果肉を付けたまま乾燥させ、種子を覆うパーチメント(硬い殻)を果肉ごと脱穀して種子を取り出す精製方法です。
ウォッシュド(水洗式)
果肉を機械等で完全に除去してから乾燥させます。
その後、種子を覆うパーチメント(硬い殻)を脱穀する方法です。
上記のように、それぞれの精製方法にはメリット・デメリットがあります。
産地によって様々な方法を使い分けているので、ぜひ多くのコーヒー豆を試して違いを楽しんでほしいです!
まずはパルプドナチュラルとハニープロセスの共通点を紹介
それではパルプドナチュラルとハニープロセスについて解説していきます。
まずは、違いの前に共通点についてです。
これら2つの精製方法は、どちらも「半水洗式」と呼ばれます。
半水洗式とは、ナチュラルとウォッシュドの中間の方法のことです。
具体的には、乾燥させる前に機械等を使って果肉を除去しますが、完全には除去せず、少しだけ果肉を残した状態で乾燥工程に入ります。
ウォッシュドの「管理がしやすい、乾燥が早い」と、ナチュラルの「フルーティーな味わい」の、2つの方法のメリットをあわせ持つのが特徴です。
パルプドナチュラルとハニープロセスの違いを完全解説
共通点の多いパルプドナチュラルとハニープロセスですが、調べているとやはり違いがありました。
今回は以下4つの角度から違いを解説します。
- 目的の違い
- 主な生産国の違い
- 風味の違い
- 工程の違い
違い①:開発目的
1つ目は、開発目的の違いです。
パルプドナチュラルは、乾燥前に未熟な実を選別するために開発されました。
収穫されたコーヒーの果実の中には、成長しきっていない未熟な実が混ざっていることがあります。
このような未熟な実が混ざったままだと、美味しいコーヒーはできません。
そのため、生産者はできるだけ未熟な実を取り除くために、パルプドナチュラルを開発しました。
具体的には以下のような仕組みで未熟な豆を選別します。
このように、未熟豆を除去することを目的に使われているのが、パルプドナチュラルになります。
一方、ハニープロセスは、コーヒーの味わいのバリエーションを増やすために開発されました。
ハルパーで残す果肉の量を意図的に調節し、味わいを自由自在に変えることができます。
違い②:主な生産国
2つ目の違いは、主な生産国です。
パルプドナチュラルで有名な国といえばブラジルになります。
なぜなら、パルプドナチュラルはブラジルで開発された精製方法になるからです。
ブラジルの生育環境は”起伏のない広大な大地”という特徴があります。
このような土地では、大規模なコーヒー畑で大量にコーヒー豆を生産することができるというメリットがある一方、収穫を大型の機械で行うため未熟な実もいっしょに収穫してしまうというデメリットがあります。
未熟な実を効率的に除去するためにも、パルプドナチュラルという精製方法は理にかなったものだと言えるのです。
ハニープロセスで有名な産地はコスタリカになります。
コスタリカは国土が狭いので、ブラジルのように大量生産することができません。
そのため、質にこだわったコーヒー豆を生産するために、味わにこだわったハニープロセスが採用されることが多いです。
「コスタリカハニー」というような言葉が存在するくらいにコスタリカといえばハニープロセスというイメージは浸透しています。
コーヒー屋に行く機会があれば、コスタリカのハニープロセスに注目してみてください!
違い③:風味
コーヒーは、精製方法だけでなく、産地や品種などによっても味わいが変わります。
そのため、一概には言えませんが、基本的にはパルプドナチュラルとハニープロセスは”ウォッシュドとナチュラルの中間の風味”と表現されることが多いです。
さらに詳しくいうと、
上記のようにいえます。
パルプドナチュラルでは、未熟な実の選別を目的にしている。
ハニープロセスでは、味わいのバリエーションを増やすことを目的にしている。
という目的の違いが味にも現れているのではないでしょうか。
ただ、ハニープロセスは味わいのバリエーションを増やすためですから、「種類・農園・生産国」などによって風味は異なります。
自分の好みの味を求めて、いろいろなハニープロセスを買うのはひとつの楽しみ方です!
違い④:工程
4つ目の違いは、工程です。
パルプドナチュラルとハニープロセスはほとんど同じ工程ですが、ミューシレージの残し具合だけ異なります。
ミューシレージとは、パーチメントの外側にある”ヌルヌルの粘液”です。
パルプドナチュラルとハニープロセスは、このミューシレージの処理に違いがあります。
- パルプドナチュラル
-
パルパーにかけて果肉を除去した後、乾燥させる場所まで水で流して実を運搬します。
水で流されているうちに、自然に半分ほどのミューシレージが取れてそのまま乾燥の工程にうつります。
- ハニープロセス
-
パルパーにかけて果肉を除去した後「ブラックハニー」「ホワイトハニー」など、種類によって工程が変化します。
ブラックハニーやホワイトハニーなどの種類の分け方は、乾燥後のコーヒー豆の色によって行います。
ミューシレージを100%残して乾燥させると黒色に近い色になるためブラックハニー。
ミューシレージを10%ほどにしてから乾燥させると白色に近い色になるためホワイトハニー。
味わいは、ミューシレージを残せばナチュラルのようなフルーティな味わいに、ミューシレージを除去すればナチュラルのようなクリアな味わいになります。
このように、ほぼ同じ工程をたどるパルプドナチュラルとハニープロセスですがミューシレージの除去に違いがあるのです。
ハニープロセスの5つの種類を解説
ハニープロセスには大きく5つの種類があります。(厳密には他にもありますが、よく見かける5つをご紹介します!)
全て色の名前で種類が分けられますが、これは乾燥後の実の色の変化がそれぞれ違うことに由来してます。
名称 | 残存ミューシレージ | 乾燥期間 | 説明 |
ブラックハニー | 100% | 30日間 | 直射日光が当たらないように上に黒っぽい幕を張って乾燥させる。 |
ゴールデンハニー | 100% | 25日間 | 始めに3日ほど直射日光にあてて、その後は上に黒っぽい幕を張って乾燥させる。 |
レッドハニー | 100% | 20日間 | 直射日光に当てて乾燥させる。 |
イエローハニー | 50% | 15日間 | 直射日光に当てて乾燥させる。 |
ホワイトハニー | 10% | 7日間 | 直射日光に当てて乾燥させる。 |
乾燥時間が長ければ長いほど、ミューシレージに含まれる糖分が中に染み込んでいくため甘みのある味わいになると言われています。
ぜひ参考にしてみてください!
パルプドナチュラルとハニープロセスの違いまとめ
パルプドナチュラルとハニープロセスの違いはわかりましたか?
工程の違いがわかりにくいことから、同じ精製方法だと考えている人も多いです。
しかし、この2つの方法には、目的や生産国、風味の面で確かに違いがあります。
ハニープロセスは味わいのバリエーションを楽しむために開発された方法ですので、ぜひ様々な味わいを楽しみたい人はお試しください!