「おいしいコーヒーを淹れるために、重要なことは?」
と聞いて何を思い浮かべますか?
人それぞれではありますが、ひとつに「水」があります。
実はコーヒーの液体の約98%は「水」が占めており、残りのたった約2%程度が「コーヒー成分」なのです。
つまり、水の善し悪しがコーヒーの善し悪しを決めると言っても過言ではありません。
今回は、この水の違いがコーヒーにどのような影響をもたらすのかを、様々な視点からお話ししていきます。
普段何気なく使っている「水の重要性」がわかるので、ぜひ最後までお付き合いください。

「水」を意識するだけで、コツもなく格段に美味しいコーヒーが淹れられるようになります!!
硬度やpHによるコーヒーの味わいの違いと最適な水の条件
水は、硬度や成分の含有量などによって感じ方が異なり、コーヒーの味わいにも大きく影響します。
結論から言うと、コーヒー抽出で推奨される水は「軟水」「PH7前後」「適切な量のミネラル」であることです。
この見出しでは
- 硬度
- pH
- 適切なミネラル量
の順で、水の特徴とコーヒーの味わいの違いついてお話していきます!
適した水①:硬度は「軟水」がおすすめ
硬度とは、「水に含まれるミネラル分の量」を指します。



水に含まれるミネラルは、主に「カルシウム・マグネシウム」などです。
世界保健機関(WHO)が、水の硬度について基準を出しているので、紹介します。
水の種類 | ミネラル量 |
---|---|
軟水 | 0~60mg/L 未満 |
中程度の軟水 | 60~120mg/L 未満 |
中程度の硬水 | 120~180mg/L 未満 |
硬水 | 180mg/L 以上 |
硬水・軟水は質感の部分で以下のような違いがあります。
硬水:イガイガした質感
軟水:スルスルと滑らかな質感
ここまでの内容を踏まえたうえで、コーヒー抽出に最適な硬度を見ていきましょう。
一般的に推奨されている硬度は、約30~80mg/Lの軟水です。
また、アジア人初のバリスタ世界チャンピオン「井崎英典さん」は約30~50mg/Lの軟水を推奨しています。



なんで軟水を推奨しているの?
というと、以下のような影響を与えるからです。
スペシャルティコーヒーは酸味と甘み、香りを味わうものなので、軟水がおすすめになります。
しかし、極端に硬度が低すぎても問題です。
- 硬度が低すぎる軟水
-
- 未抽出のコーヒー
- 酸味が強い
- 味が薄い
- 硬度が高すぎる硬水
-
- 過抽出の硬水
- 苦みや渋みが強い
- えぐみがある
このことから、硬度が低すぎても高すぎてもおいしくなく、成分が適切に抽出されないということがわかります。



約30~80mg/L(30~50mg/L)のほどよい軟水が最も適しています!
適した水②:pH「7.0」前後


pHとは「1~14」までの数値で示した「酸性」「中性」「アルカリ性」を表す尺度です。
コーヒーに適しているのは「中性」つまり「PH7.0」前後になります。
尺度別にすると以下のような味わいになります。
酸性:酸味が強い
中性:バランスが取れた味わい
アルカリ性:酸味が抑えられる
上記の理由として、コーヒーの液体は元々「弱酸性飲料」のため、
酸性の水で淹れた場合➜さらに酸性が強まる
アルカリ性の水で淹れた場合➜中和されて酸味が抑えられる
しかし、アルカリ性数値が高すぎると酸味が弱まりすぎて、「ぼやけた味」になってしまいます。
適した水③:適切な量のミネラル「カルシウム」「マグネシウム」
この2つは水に含まれるミネラルの中で最も重要であり、含まれる量によって味わいが変化します。
成分が与える影響は以下です。
成分 | 味わい |
---|---|
カルシウム | ボディやマウスフィールといった質感に影響 ➜多いほど、コクのあるどっしりた質感に |
マグネシウム | フルーティな酸味やフレーバーに影響 ➜多いほど、酸味やフレーバーが明確に |



ナチュラルプロセスやゲイシャなど特別な品種の場合は、個性的なフレーバーを楽しむために「マグネシウム」が多い水を選ぶのがおすすめです!
- 硬度「約30~80mg/L(30~50mg/L)」の軟水
- pH7の中性
- コクを出したい「カルシウム」
- 酸味とフレーバーを出したい「マグネシウム」
コーヒー抽出に最適な水はどうやって用意する?
ここまでの内容で、コーヒーの味わいに「水」が大きくかかわっていることがわかりました。
- 硬度「約30~80ml(30~50ml)」の軟水
- pH7の中性
- コクを出したい「カルシウム」
- 酸味とフレーバーを出したい「マグネシウム」
では、上記条件を満たす「水」はどのようにして用意すればいいのでしょうか?
最適な方法は「ペットボトルの軟水」を使うことです。
- 硬度が数値化されている
- ミネラル成分・PHが明記されている
- 不純物がない
水道水や浄水は、「何がどれくらい」含まれているのか?という数値的な判断ができません。
そのため、「硬度」や「成分量」が明記されているのでペットボトルの軟水がおすすめになります。
参考程度に、私がいつも使っている水をご紹介します。
- サントリー天然水
- クリスタルガイザー
ペットボトルの軟水が最適ではありますが、自宅でカジュアルに楽しむ際は、浄水器やウォーターサーバーの水を使うだけで、いつもよりおいしいコーヒーが楽しめます!
コーヒーの水には「世界基準」がある?
ざっくりとした数値でおすすめの水の基準を紹介しましたが、世界基準だと、より明確な数値になります。
2009年、SCAA(Specialty Coffee Association of America)がおいしいコーヒーを淹れるための基準水を発表しました。



基準水は、購入できるものではなく、作るものです。
そのため、自宅でカジュアルに楽しむ範囲を超えています。
自分には関係のない話に見えますが、水の世界基準を知っていると、ペットボトルの軟水を選ぶ際の判断材料として応用できるので、かなり便利です!
ブックマークなどで、いつでも見れるようにしてみてください。
「Water for Brewing Standards(SCAAが定める基準水)」の作り方
ミネラルや不純物を極限まで無くした水のこと
匂い | クリア、無臭 |
色 | 無色透明 |
TDS | 150 mg/L(75~250 mg/L) |
硬度 | 68 mg/L(17 mg/L~85 mg/L) |
アルカリ | 40 mg/L(40 mg/L前後) |
pH | 7.0(6.5~7.5) |
ナトリウム | 10 mg/L(10 mg/L前後) |



日本の水に応用するならば、「硬度」「pH」の数値が参考になります!
ちなみに、純水にマグネシウム・カルシウムが加わると酸味が強くなりすぎるので、アルカリやナトリウムを入れて中和します。
日本の水道水は軟水?硬水?
結論から言うと日本の水は「軟水」です。
また、水道水を直接飲めるという点で、世界的に見てもとても美味しいお水とされています。(水道水を直接飲むことができる国は世界でも15か国程しか無いそうです)
なぜ日本は軟水なのか?
それは「日本の地形」が大きく関係しているようです。
硬度の高さはミネラル分の量になります。
このミネラルは「山の地層や石灰岩」に多く含まれている成分です。
地中の水がミネラル豊富な地層や石灰岩などをゆっくり流れれば流れるほど、「滞留時間が長くなる」ので、硬度が高くなりますが、
日本の場合は、水が透過しやすい火山性の山々が連なり、雨も多いので、結果的に地中での滞留時間が短くなり、硬度が低くなります。
これが日本が軟水である理由です。
地方ごとの水の硬度を紹介
当たり前ですが、水道水に使用する原水は地方によって違います。



例えば、河川やダムなどの場合はミネラル分が少なめで、地下水の場合はミネラル分が多くなります。
そのため、地方ごとに硬度が違ってくるので、自分の住んでいる地域の水道水が、コーヒーに適しているかの確認が必要です。
下記の数値は「各地方の水の硬度」になります。
地方 | 硬度(mg/L) |
---|---|
北海道 | 29 |
東北 | 30 |
関東 | 67 |
中部 | 38 |
近畿 | 42 |
中国 | 35 |
四国 | 48 |
九州 | 47 |
沖縄 | 50 |
世界基準の硬度は、68 mg/L(17 mg/L~85 mg/L)なので、関東がほぼ同じになります。
他の地方も、基準内に入っているので、硬度の面で見ると日本の水道水はコーヒーに適しているようです!
コーヒーを水道水で淹れるとどんな味がする?
日本の水道水は、世界的に見てもコーヒーに適したおいしい水です。
しかし、それでも私は水道水を直接の飲用水やコーヒー抽出に使用するのはおすすめしません。
なぜなら、水道水には「塩素」が含まれているからです。
また、水道管の劣化状況によっては、「錆や金属臭」を感じてしまいます。
- 雑味・えぐみ
- カルキ臭
- 口の中に曇ったように残る酸味
- コーヒー以外の味わい
スペシャルティコーヒーの良さは「良質な酸」「甘さ」「フレーバー」です。
水道水には塩素をはじめ不純物が混じっていますので、そのまま使って淹れたコーヒーは、全体的に雑味が強く、ぼんやりとした味わいとなってしまいます。
コーヒー本来の味を楽しむためにも、水道水はあまりおすすめしません。
コーヒーを水道水で淹れる際のポイント3選



ペットボトルの水を買いに行くのはめんどくさい!
でも、浄水器もない!
どうすれば、自宅でもおいしいコーヒーを淹れられるの?
という方のために、水道水で淹れる際のポイントをお伝えします。
大きく分けて3つあり、この方法を実践することでカルキ臭を取り除くことができたり、美味しくない水を改善させることができます。
ポイント①:朝一の水は使わない
驚くかもしれませんが、朝一番の水は綺麗で安全とは言えません。
また、久しぶりに出す水道水は特に注意が必要になります。
長時間の間、水道管に水が滞留するので消毒作用である塩素が少なくなっているからです。
1L程度捨てるか、飲料でないものに使用し、水を循環させてから使いましょう。
そうすることで、正常量の塩素を含んだ水が出てくるので、消毒された綺麗な水道水を飲むことができます。
ポイント②:煮沸をする
煮沸をすることで、カルキ臭(プールなどでも感じる、独特の塩素消毒のにおい)とも呼ばれる「塩素」を取り除く事が出来ます。
塩素は高温で蒸発する性質があるので、「煮沸」で簡単に除去できますが、以下の注意が必要です。
- 70℃以上の高温でないと除去できない
- 10-30分程度の煮沸が必要
- 煮沸時間が短すぎると、人体に悪い物質が増えてしまう
- 煮沸後に冷蔵庫で冷やすとカルキ臭が感じられにくくなる
- 煮沸後はできるだけ早めに飲む
この中で特に重要なのが、「長時間、煮沸させること」です。
水道水には人体に影響のない範囲の数値で塩素が含まれていますが、その他「トリハロメタン」という成分も同様の微量数値で含まれています。
このトリハロメタンは、発がんの恐れがある物質であり、水温を短時間で上昇させると急激に増えてしまう性質があります。
ある研究結果では、沸騰直前のトリハロメタンが加熱前の1.0~3.6倍になったという報告があるほどです。
完全に除去するためには、10~30分ほどの加熱が必要なので、必ずお守りください。
また、電気ポットを使うときには、沸騰操作を数回繰り返すことでトリハロメタンを除去できます。
ポイント③:築年数が古い場合は水道水は使わない
これは想像しやすいと思いますが、築年数が古い建物やアパート・マンションの場合は「水道管が錆ている」可能性があります。
色のついた水が出てこないとしても、何となく違和感のある味や鉄の味がしたら要注意です!
また、築年数の古い建物では鉛製の給水管が現在も使われていることがあり、その水道管内の鉛が、滞留した水に溶け出している可能性があります。
鉛は体に蓄積してしまう性質があり、人体に有害です。
これは日本の水道局がどの地域でも呼びかけている「注意事項」になるので、当てはまる方は、煮沸などではなく、ペットボトルの水やウォーターサーバーなどをお使いください。



築年数の目安として「20年以上」の建物である場合は水道水は使用しない方が良いです。
まとめ
お水とコーヒーの関係についてまとめます。
- コーヒー抽出に適した水は硬度「約30~80ml(30~50ml)、PH7の軟水」
- カルシウム:ボディやマウスフィールといった「質感」
- マグネシウム:フルーティな「酸味」や「フレーバー」
- 水に含まれる成分を数値化した、コーヒー抽出に適する世界基準がある
- 日本の水が「軟水」なのはミネラルを含みにくい地形のため
- 水道水は「長時間煮沸」させることでカルキが飛び、コーヒー抽出に適する
- 煮沸した水や、築年数の古い建物の水は、注意して使用する必要がある
当たり前に飲んでいる「水」がこんなにも「奥が深いものである」ということを知っていただけたら幸いです。
おいしいコーヒーは、おいしい水から生まれます。
数値的なお話しは少し難しかったかもしれませんが、ぜひ今日からペットボトルの「成分表示」を見て、コーヒーに最適な水を選んでみてください。
複数の種類の水を購入し、水違いでコーヒーを比較するのも楽しそうだなと個人的に思っています!