コーヒー粉にお湯を注ぐと、粉がモコモコと大きく膨らんでいく光景をよく見ませんか?
きれいな膨らみを見ると「なんだか美味しそうだな」って感じますよね。
──それに、ちょっとかわいいなとも思ってしまいます。
その反対に「膨らまないコーヒー」に出会い、味わいに不安を感じたこともあるのではないでしょうか?
コーヒー用語ではモコモコと膨らむ状態を「コーヒードーム」と言います。
あなたはこのコーヒードームを見て、
「膨らむ」=「美味しいコーヒー」
「膨らまない」=「美味しくない」「上手く淹れられなかった」
と思っているかもしれません。
しかし、実はこの認識、、、。
半分正解で、半分不正解になります。
「コーヒードーム」の正体と、膨らみの関係についてわかりやすく解説します。
きれいなコーヒードームを膨らませるための方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください!
よく耳にするコーヒードームとは?よくある疑問を深掘り!
「コーヒードーム」とは、お湯が注がれた時にできるモコモコの膨らみのことです。
このコーヒードームは「二酸化炭素 + 香りの成分」で構成されています。
また、「良い抽出を行った『過程』にできるもの」でもあります。
「正体はわかったけど、もっと詳しく知りたい!
それに良い抽出の過程でできると言われても、だから何なの?ってなるよ!」
と思われているかもしれません。
そこで、ここからはコーヒードームに関するよくある3つの疑問について深掘りしていきます!
疑問①:どこから、二酸化炭素は出るの?
疑問②:なぜ、二酸化炭素が出るの?
疑問③:良い抽出とコーヒードームの関係は何なの?
疑問①:どこから、二酸化炭素は出るの?
二酸化炭素は、豆一粒一粒の内側に入っており、そこから放出されます。
ただ、元から二酸化炭素を含んでいるのではなく、焙煎することで化学反応がおこり、二酸化炭素を含むようになります。
イメージ的には以下の流れです。
以上の流れで豆一粒一粒の内側に二酸化炭素が発生し、抽出時にはコーヒードームを作る要因になります。
疑問②:なぜ、二酸化炭素が出るの?
「二酸化炭素の居場所がお湯と入れ替わるから」です。
先ほど、二酸化炭素は焙煎により「豆の内側」に発生すると言いました。
そのため、お湯を注ぐと以下のような流れで変化が起きます。
コーヒードームは、お湯と豆がしっかり接触しないとできないので、順調に成分が抽出されていることの証明にもなります。
疑問③:良い抽出とコーヒードームの関係は何なの?
コーヒードームは「良い抽出を行った『過程に』できるもの」です。
ここでいう「良い抽出」とは、「豆の個性を最大限に引き出す抽出」のことだと思ってください。
上記の考えを持つと、ポイントになるのは「コーヒーに含まれる成分をいかに効率よく抽出するか」になります。
効率よく抽出するためには様々な方法があり、ひとそれぞれの価値観に沿って選択します。
しかし、間違いなく全員が取り入れる方法というのが「蒸らし」です。
蒸らしとは、抽出の一投目に行うもので、粉と同量〜2倍程度のお湯を注ぎ、30秒ほど待つ工程のことになります。
蒸らしを行うことにより、コーヒー粉全体がお湯とふれあい、抽出効率を格段に上げてくれるのです。
実は、この蒸らしを行ったときにのみ発生するのが「コーヒードーム」になります。。
蒸らしを行わず大量のお湯を注ぐと、コーヒードームはできません!
コーヒードームが膨らまない理由6選
蒸らしをすれば、必ずコーヒードームが膨らむかというと、そうではありません。
膨らまない理由は以下の6つがあげられます。
- 浅い焙煎豆の使用
- 豆の劣化
- 挽いて放置した豆
- 低温抽出
- 粗い粒度
- 少ない粉量
- ひとつずつ詳しく解説します。
理由①:浅い焙煎豆の使用
「浅煎りは、膨らまないものだ!」という認識で問題ありません。
膨らまない理由は、深煎りよりも焙煎時間が短いため「二酸化炭素が少ない」からです。
単純に、コーヒードームは二酸化炭素が少なければ膨らみも弱くなります。
買ったばかりのコーヒーなのに、何で浅煎りは膨らまないの?
と心配に思っていた方もいるかもしれませんが、浅煎りは膨らなくても美味しく楽しめるので安心してください。
理由②:豆の劣化
焙煎から数ヶ月経ってしまうと、ほとんど膨らみません。
なぜなら、抽出時以外も二酸化炭素は空気中へ逃げているからです。
二酸化炭素が抜ける時に、実は香り成分も一緒に抜けているので、風味が弱くなります。
また、直接的な関係はありませんが、二酸化炭素が少なくなるほど時間がたっていると、光や水分などの影響で豆が劣化している状態であることが多いです。
劣化した豆は、刺激的な酸味や鼻につく匂いが出てくるので、正直飲めたものではありません。
よく、膨らまないコーヒー豆はおいしくないといわれますが、これが理由です!
鮮度が低いコーヒー豆は、お湯を掛けても「平らな状態」か「中心が勝手に凹んでしまう」傾向にあります。
浅煎りは元々膨らまないので、「凹み」が劣化のサインです。
理由③:挽いて放置した豆
「粉の状態」は、「豆の状態」よりも空気に触れる面積が大きいので、二酸化炭素が早く放出されます。
放置すればするほど、二酸化炭素が抜けていき、それに合わせて香りも失われるので注意が必要です。
理由④:低温抽出
低温だと、コーヒーの抽出効率が下がり、二酸化炭素が発生しにくくなります。
狙って温度を下げている場合は問題ありませんが、そうでない場合はふたたび温め直しましょう。
理由⑤:粗い粒度
粒が粗いということは、表面積が小さいということですから、「お湯に触れる面積」も小さくなります。
お湯に触れないと二酸化炭素は出てこないので、粗い粒度はコーヒードームが膨らみにくいです。
理由⑥:少ない粉量
単純に、粉の量が少なければ二酸化炭素の量も少なくなるためです。
コーヒードームを大きくするための6つの要素
では、コーヒードームを大きくするには、どうしたら良いのでしょうか?
6つの要素を挙げてみました。
- 焙煎度
- 鮮度
- 挽いてからの経過時間
- 湯温
- 粒度
- 粉量
勘の良い方はお気付きかもしれません。
結論から言うと、「膨らまない理由」の逆を行えば良いのです。
一応、ひとつずつ解説するので、参考までにご覧ください。
要素①:焙煎度
「深煎りの豆」を使用しましょう。
前の見出しでも少し触れましたが、焙煎の進んだ深煎りは二酸化炭素を多く含んでいます。
そのため、大きくきれいに膨らんでくれます。
要素②:鮮度
「焙煎したての豆」を使用しましょう。
個人的に「焙煎後2種間以内」、正しく保存した場合は「1ヶ月以内」がおいしく楽しめるラインだと考えています。
コーヒー豆の保存方法はこちらをご覧ください。
要素③:挽いてからの時間
挽いた粉は「挽きたてを、なるべく早く」使用しましょう。
粉の状態では30分で劣化すると言われています。
要素④:湯温
高温で抽出するとコーヒードームが膨らみやすいです。
温度が高ければ高いほど、お湯がコーヒー豆に浸透しやすくなり、二酸化炭素が放出されます。
ただし、二酸化炭素だけでなく他の成分も抽出されるので、深煎りで高温にすると苦みが強くなりすぎるなど、注意が必要です。
コーヒードームだけでなく、全体のバランスを見ながら温度を決めていきましょう。
要素⑤:粒度
「細かい粒度」で抽出するとコーヒードームが膨らみやすいです。
理由は表面積が大きくなるので、お湯に接しやすいからになります。
二酸化炭素だけでなく、他の成分も抽出されやすくなるので、湯温と同じで全体のバランスを考えることが重要です。
要素⑥:粉量
粉量を増やすと、コーヒードームは膨らみやすいです。
ただし、飲みたい量に合わせて粉量は決めるようにしましょう。
もし、3杯分や4杯分と、多めに淹れる時に「いつもより大きいコーヒードームを楽しめるぞ!」とワクワクするくらいがちょうどいいです。
コーヒードームが膨らまないと必ずまずいのか?
結論から言うと、使用する豆の鮮度と焙煎度合によって「おいしい・まずい」の答えは変わります。
【条件:焙煎から数日以内の、鮮度の良い豆】
【条件:焙煎から数ヶ月経った、鮮度の悪いコーヒー豆】
膨らまない理由は複数個あるので、「膨らまない=まずい」ではなく、「鮮度の良い・悪いを見極めるひとつの要素」として参考にするのがおすすめです。
コーヒードームを正しく理解してコーヒー抽出を楽しもう!
少し難しい部分もあったかもしれませんが、いかがでしたでしょうか?
全体をまとめますと、
- コーヒードームとは?
-
モコモコと膨らんだ状態のこと
- コーヒードームの正体は?
-
・二酸化炭素+香り成分
・良い抽出(蒸らし)の過程でできるもの」
- コーヒードームが膨らまないネガティブな理由は?
-
・コーヒー豆の劣化
・抽出のやり方が悪い
- コーヒードーム膨らまないポジティブな理由は?
-
浅煎りのコーヒー豆を使っている
➜鮮度の良い浅煎りのコーヒー豆はふくらまないけどおいしい!
コーヒードームについて詳しく解説してきましたが、最後に注意点があります。
それは「綺麗なコーヒードームを作ることが目的ではない」ということです。
コーヒードームを無理に膨らませようとすると、二酸化炭素と一緒に他の苦み成分や酸味成分も抽出されてしまいます。
その結果、きれいに膨らんだけど「苦すぎてまずい」「すっぱすぎてまずい」なんてことになりかねません。
全体のバランスを見て、おいしいコーヒーを抽出するおまけとして、コーヒードームの美しい膨らみを楽しんでもらえたらなと思います!
それでは、最後までお読み頂きありがとうございました!