ティピカやブルボンなど、アラビカ種の代表的な品種はどれも個性豊か。
風味や香りの違いを知ると、コーヒーの時間がいっそう贅沢に感じられるようになります。
『何となくいつもと同じもの』を選ぶのではなく、自分にぴったり合うお気に入りの品種を見つけることで、ちょっとした“自分へのご褒美”になるかもしれません!
アラビカ種とは?
アラビカ種 (Coffea arabica) は、全世界のコーヒー生産量の約60%を占める品種です。
酸味のバランスが良く、風味の複雑さが特徴で、標高の高い地域で栽培されます。
他の主要品種であるロブスタ種は、麦茶のような香ばしさと焦げのような苦みが特徴ですので、正反対の風味と言えます。
コーヒーの代表的なアラビカ種11選|味わいと特徴を徹底解説
1. ティピカ (Typica)
概要
ティピカはアラビカ種の最古の系統の一つであり、ブルボンと並ぶアラビカコーヒーの「原型品種」です。
歴史的背景
17世紀頃、イエメンからインドやインドネシアを経てヨーロッパ各地(オランダ、フランスなど)に伝播し、その後中南米へ広がりました。ジャマイカのブルーマウンテンも大きくはティピカ系統に含まれます。
項目 | 詳細 |
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風味 | 明るい酸味と柔らかな甘み、すっきりとした後味。 |
口当たり | クリアで繊細、軽め〜中程度のボディ。 |
主な生産地 | コロンビア、グアテマラ、ジャマイカ 等 |
補足 | バランスがよくクラシックなアラビカの風味プロファイルとして、スペシャルティ業界で基準的な存在とされています。 |
2. ブルボン (Bourbon)
概要
ティピカとともにアラビカ種の最古の系統。フランスがインド洋のブルボン島(現在のレユニオン島)に持ち込んだコーヒーが起源とされています。
歴史的背景
18世紀にブルボン島からアフリカ大陸や中南米へ広がり、現在でも多くの派生品種(カトゥーラ、パカスなど)を生み出しました。
項目 | 詳細 |
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風味 | 甘味が強く、フルーティーさ(シトラスやベリー系)が感じられるものから、チョコレートのような甘さを持つものまで幅広い。 |
口当たり | ティピカに比べてややしっかりとした質感があり、酸味・甘味のバランスが良い。 |
主な生産地 | ブラジル、ルワンダ、ブルンジ 等 |
3. カトゥーラ (Caturra)
概要
ブルボンの自然突然変異で、1937年にブラジルで発見されました。樹が小柄(ドワーフ品種)で、密植栽培が可能なため多くの生産者が採用。
項目 | 詳細 |
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風味 | ブルボン由来の甘味に加え、柑橘系の酸味が強調される傾向。 |
口当たり | 軽め〜中程度。さっぱりとした飲み口。 |
主な生産地 | コロンビア、コスタリカ |
補足 | 樹高が低く、収穫作業がしやすい反面、病害への耐性はやや低めとされています。 |
4. ゲイシャ (Geisha)
概要
エチオピアの「ゲシャ村」周辺が起源とされる在来種が、20世紀半ばに中南米へ持ち込まれ、パナマで選抜・定着した品種。
項目 | 詳細 |
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風味 | ジャスミンやベルガモットなど、明確なフローラルアロマが印象的。紅茶のような香味が感じられることも多い。 |
口当たり | シルクのように滑らかで、繊細な酸味を強く感じる。 |
主な生産地 | パナマ、エチオピア、コスタリカ 等 |
補足 | 2004年にパナマの品評会で高評価を受け、一躍世界的に注目を集めました。希少性と独特のアロマからオークションで高値がつきやすい。 |
5. SL28
概要
SLは「Scott Laboratories(スコット・ラボ)」の略称。ケニアで1920~1930年代に英国のスコット研究所が開発・選抜した品種の一つ。
項目 | 詳細 |
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風味 | ブラックカラント(カシス)を思わせるベリー系の鮮明な酸味とスパイシーなニュアンス。 糖度が高く、酸とのバランスが良いため複雑な風味を持ちます。 |
主な生産地 | ケニア、ウガンダ 等 |
補足 | フレンチミッション・ブルボンなどをベースに改良されており、高地栽培に適応した性質を持ちます。 |
6. SL34
概要
SL28と同じくスコット・ラボによる改良品種。基本的にはブルボン系統の一つ。
項目 | 詳細 |
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風味 | SL28同様フルーティーな酸味が特徴だが、より濃厚なボディと深いコクを感じることが多い。 SL28が明るく鋭い酸味を持つのに対し、SL34は甘味・コクのバランスが豊かで重厚感がある。 |
主な生産地 | ケニア 等 |
補足 | 高標高での生育が推奨される一方、やや病害耐性が低い面もありま |
7. ムンドノーボ (Mundo Novo)
概要
ティピカとブルボンがブラジルで自然交配し、1940年代に正式に品種として定着。
項目 | 詳細 |
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風味 | ナッツやキャラメルのような甘味が強く、後味にはチョコレートのようなコクが感じられる場合もある。 |
口当たり | しっかりとしたボディながら、雑味が少なくクリアな印象。 |
主な生産地 | ブラジル 他 |
補足 | 高収量で病害への耐性が比較的強く、ブラジルの大規模農園でも多く採用されてきました。 |
8. カトゥアイ (Catuai)
概要
カトゥーラとムンドノーボを人工交配してブラジルで生まれた品種。1960年代に研究が進み、1972年に正式登録。
項目 | 詳細 |
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風味 | 甘味と酸味がバランスよく、中庸的。フルーティーさやチョコレート感が感じられる場合が多い。 |
口当たり | 中程度のボディで飲みやすく、様々な焙煎度に対応しやすい。 |
主な生産地 | ブラジル、ホンジュラス 等 |
補足 | 耐病性が比較的高く、風などで実が落ちにくい「落果耐性」に優れる点が評価され、ブラジルや中米で普及。 |
9. パカス (Pacas)
概要
パカスは、ブルボン(Bourbon) の自然突然変異として知られています。1949年にエルサルバドルのパカス家(Pacas family)の農園で発見され、家族名にちなんで「Pacas」と命名されました。
項目 | 詳細 |
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風味 | チョコレートやナッツ系のほのかな甘味、フルーティーな酸味。 酸味は比較的やわらかく、甘味とのバランスが良い傾向があります。 |
口当たり | ミディアムボディで、丸みがありながらクリーンな印象。 |
主な生産地 | エルサルバドル 等 |
補足 | ブルボンの特性(甘味や豊かな酸味)を引き継ぎつつ、樹高が低く収穫がしやすいという利点を持ちました。 |
10. マラゴジッペ (Maragogipe)
概要
ティピカ系の突然変異。19世紀にブラジルのバイーア州マラゴジッペ近郊で発見されたため、この名がついた。
項目 | 詳細 |
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風味 | 繊細な酸味と軽めのボディが特徴。華やかというよりは柔らかい印象の風味をもつ。 |
口当たり | 柔和でクリア。繊細な風味を損なわないよう、浅煎り〜中煎りが好まれることが多い。 |
主な生産地 | メキシコ、グアテマラ 等 |
補足 | 「象豆(Elephant Bean)」とも呼ばれるほど豆が大きい。収量は少なめ。 |
11. パカマラ (Pacamara)
概要
エルサルバドルで1960年代に、パカス(Pacas, ブルボン由来の突然変異)とマラゴジッペ(Maragogipe, ティピカ系突然変異)を交配して誕生。
項目 | 詳細 |
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風味 | 柑橘系の酸味や明るさ、時にトロピカルフルーツやフローラルなアロマが混在。 |
口当たり | 豆が大粒なこともあり、クリーミーでしっかりしたボディを感じやすい。 |
主な生産地 | エルサルバドル、ニカラグア、ホンジュラス 等 |
補足 | 豆が大きく、栽培には高度な管理が必要とされるが、高品質なカッピングスコアを得やすい。 |
品種の違いを知れば、より面白く。
いかがでしたか?
同じアラビカ種でも、育った場所や品種の特徴でこんなにも風味の広がりが変わるなんて驚きですよね。
普段のコーヒーブレイクが、ほんの少しの知識や意識の変化で、より豊かな時間へと生まれ変わります。
日々の家事や仕事に追われていても、丁寧に淹れた一杯は心をほぐし、頭をクリアにしてくれます。
小さな心のゆとりを見つけるために、ぜひいろいろな品種を試してみてください。